パワハラで会社が負う法的責任とは?ポイントを分かりやすく解説

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職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、企業経営にも深刻な影響を及ぼす問題です。

ハラスメントが起きた場合、加害者本人だけでなく、企業も法的な責任を問われ、損害賠償を命じられる可能性があります。

本記事では、パワハラ発生時に企業が負うことになる法的責任の根拠、賠償金の相場、そして企業に求められる具体的な防止策や対応について解説します。

パワーハラスメントへの対応については「[パワーハラスメントへの対応方法](https://www.labor-management.net/laborcolumn/056/)」で詳しく紹介しています。

パワハラを放置した会社が直面する3つの重大リスク

職場でのパワーハラスメントを企業が放置、あるいは黙認した場合、3つの重大なリスクに直面します。

第一に、被害者から損害賠償を請求される法的リスクです。

企業は従業員の安全を守る義務を負っており、これを怠ったと判断されれば高額な賠償責任が生じます。

第二に、企業の社会的信用の失墜です。

ハラスメント問題が公になれば、企業イメージは大きく損なわれ、顧客離れや取引停止につながる恐れもあります。

第三に、職場環境の悪化による人材流出と生産性の低下です。

優秀な人材が離職し、従業員のモチベーションが下がることで、企業の競争力そのものが削がれてしまいます。

パワハラで会社が問われる2つの法的責任

パワーハラスメントの発生時、企業が法的に問われる責任は主に2つあります。

それは「使用者責任」と「安全配慮義務違反」です。

これらは、従業員である加害者が起こしたハラスメント行為について、使用者である企業も責任を負うべきだとする考え方に基づいています。

セクハラやパワハラ事案の解決については「[セクハラ・パワハラ事案の解決](https://www.labor-management.net/sexual-and-power-harassment/)」で詳しく紹介しています。

使用者責任は、労働者が業務に関連して他人に与えた損害を賠償する責任であり、安全配慮義務違反は、企業が労働者の心身の安全を確保する義務を怠った場合に問われる責任です。

どちらの責任を根拠とするかで、法的な構成は異なりますが、いずれも企業に損害賠償責任が生じる可能性があります。

加害者の行為を監督する「使用者責任(民法715条)」

使用者責任とは、従業員(被用者)が「事業の執行について」第三者に損害を与えた場合、使用者である会社も損害賠償責任を負うことを定めたものです(民法715条)。

パワハラが業務時間中や業務に関連する状況で行われた場合、それは「事業の執行について」の行為とみなされます。

この責任は、加害者個人の責任が免除されるわけではなく、会社と加害者が連帯して被害者への賠償責任を負う形となります。

会社は、従業員の選任や監督において相当の注意を払っていたことを証明できない限り、この使用者責任を免れることは困難です。

従業員の安全を守る「安全配慮義務違反(労働契約法5条)」

企業は、労働契約法第5条に基づき、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています。

職場におけるパワハラは、労働者の心身の安全を脅かす行為であり、企業がパワハラの事実を認識しながら適切な措置を講じなかった場合、この安全配慮義務に違反したと判断されます。

これは民法上の債務不履行責任にあたり、被害を受けた労働者は、企業に対して精神的苦痛や治療費などの損害賠償を請求することが可能です。

パワハラの慰謝料はいくら?賠償金の相場と金額が決まる基準

パワーハラスメントを理由とする損害賠償請求では、慰謝料が大きな要素となります。

慰謝料の金額には法律で定められた明確な基準はなく、個別の事案ごとに裁判所が判断します。

そのため、金額はケースバイケースで変動しますが、過去の裁判例からある程度の相場を把握することは可能です。

金額を左右するのは、ハラスメント行為の態様や期間、被害の程度、会社の対応など、様々な要素が総合的に考慮されます。

パワハラによる慰謝料の一般的な相場

パワハラによる慰謝料、すなわち精神的苦痛に対する損害賠償の相場は、一般的に50万円から100万円程度とされています。

ただし、これはあくまで目安であり、事案の内容によって大きく変動します。

例えば、一過性の暴言や無視といった比較的軽微なケースでは数万円から数十万円程度にとどまることもあります。

一方で、行為が悪質であったり、長期間にわたって執拗に繰り返されたりした場合には、賠償額は数百万円にのぼることも少なくありません。

慰謝料が高額になるケースとは?具体的な判断要素

損害賠償額、特に慰謝料が高額になるのは、ハラスメント行為が悪質かつ深刻な結果を招いた場合です。

具体的な判断要素としては、暴行や傷害の有無、暴言の頻度や執拗さ、行為の継続期間、加害者の地位などが挙げられます。

また、被害者がうつ病などの精神疾患を発症した、休職や退職に追い込まれた、あるいは最悪の場合、自殺に至ったといったケースでは、被害の重大性から損害賠償額は数千万円以上に達することもあります。

さらに、会社がパワハラの訴えを放置するなど、事後対応が不適切だった場合も、賠償額が増額される一因となります。

【パワハラ防止法】企業に義務付けられた予防措置と事後の対応

2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法、通称「パワハラ防止法」により、大企業に対して職場におけるパワーハラスメント防止措置を講じることが義務化され、中小企業へは2022年4月から義務化されました。

この法律は、単にハラスメントが発生した後の対応だけでなく、発生そのものを未然に防ぐための体制整備を企業に求めています。

具体的には、事業主の方針の明確化や周知・啓発、相談体制の整備などが義務付けられており、これらの措置を怠った場合、行政による助言・指導、勧告の対象となります。

事前に講じるべき4つのパワハラ防止策

パワハラ防止法に基づき、企業が事前に講じるべき措置は主に4つあります。

第一に、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、就業規則などに規定して全従業員に周知・啓発することです。

第二に、相談窓口をあらかじめ定め、従業員が安心して相談できる体制を整備することが求められます。

第三に、パワハラの相談があった際に、その内容や状況に応じ迅速かつ適切に対応するための手順を定めておく必要があります。

第四に、相談者のプライバシーを保護し、相談したことを理由に解雇その他不利益な取扱いを行わない旨を定め、周知することも企業の重要な義務です。

パワハラ発生後に会社が取るべき対応フロー

パワーハラスメントに関する相談が寄せられた場合、企業は迅速かつ公正に対応しなければなりません。

まず、相談者と加害者とされる人物の双方から事実関係を正確にヒアリングし、必要に応じて第三者からも事情を聴取します。

事実確認の結果、ハラスメントがあったと判断した場合は、速やかに被害者に対する配慮措置を講じます。

労働組合がパワハラを訴えてきた際の対応については「[労働組合がパワハラを訴えてきた際の対応](https://www.labor-management.net/laborcolumn/034/)」で詳しく紹介しています。

同時に、就業規則に基づき加害者に対して懲戒処分などの厳正な措置を取り、その後の再発防止策を策定・実施することが重要です。

この一連の対応を適切に行うことが、企業の法的責任を軽減し、職場秩序を回復させることにつながります。

パワハラと会社の責任に関するよくある質問

ここでは、パワーハラスメントと企業の責任に関して、経営者や人事担当者から寄せられることの多い質問に回答します。

会社の責任範囲や、加害者への損害賠償請求(求償)の可否など、実務上の疑問点を明らかにします。

ハラスメント問題への適切な対応は、法的リスクを管理する上で不可欠です。

加害者が直接の部下でなくても会社の責任は問われますか?

はい、問われる可能性があります。

会社の使用者責任(民法715条)は、直接の指揮命令関係にある部下に限定されません。

他部署の従業員や先輩・後輩間、同僚間のパワハラであっても、それが企業の事業の執行に関連して行われたと判断されれば、企業は被害者に対して損害賠償責任を負うことがあります。

セクハラやパワハラ事案の相談は「[セクハラ・パワハラ事案の相談](https://www.labor-management.net/laborcolumn/035/)」で詳しく紹介しています。

会社はパワハラ加害者本人に損害賠償額を請求できますか?

はい、請求できる場合があります。

会社が被害者に対して損害賠償金を支払った場合、その費用を加害者本人に請求することを「求償」と呼びます。

ただし、裁判では会社の監督責任なども考慮されるため、支払った全額の求償が認められるケースは稀で、行為の悪質性や会社の管理体制に応じて、一部の請求に制限されることが一般的です。

まとめ

職場におけるパワーハラスメントは、企業の法的責任に直結する重大な問題です。

会社は、使用者責任や安全配慮義務違反に基づき、被害者への損害賠償責任を問われる可能性があります。

パワハラ防止法により、企業には相談窓口の設置や再発防止策などの体制整備が義務付けられています。

日頃からハラスメント防止策を徹底し、万が一問題が発生した際には迅速かつ適切に対応することが、企業のリスク管理において極めて重要です。

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この記事の監修者:樋口陽亮弁護士


弁護士 樋口陽亮 (ひぐち ようすけ)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 樋口陽亮 (ひぐち ようすけ)

【プロフィール】

出身地:
東京都。
出身大学:
慶應義塾大学法科大学院修了。

2016年弁護士登録(第一東京弁護士会)。経営法曹会議会員。
企業の人事労務関係を専門分野とし、個々の企業に合わせ専門的かつ実務に即したアドバイスを提供する。これまで解雇訴訟やハラスメント訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件など、多数の労働事件について使用者側の代理人弁護士として幅広く対応。人事労務担当者・社会保険労務士向けの研修会やセミナー等も開催する。

当事務所では労働問題に役立つ情報を発信しています。

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