日本全国に対応しております!
受付時間:平日9:00~17:00
日本全国に対応しております!

お電話・メールで
ご相談お待ちしております。
受付時間:平日9:00~17:00
受付時間:平日9:00~17:00
日本全国に対応しております!
目次
試用期間を踏まえて本採用しないと判断することは、結局は解雇に該当します。そのため、能力不足であるとか、もともと期待されていた能力を備えていなかったという場合には、①ある能力を期待して採用したこと、②その求められる、期待される能力がなかったこと、③その能力を短期間で身に付けられる可能性がないことなどを立証していく必要があります。
今回ご紹介する裁判例(N事件・東京地裁令和3年10月20日判決)は、溶接経験がある技術者を中途採用したものの、入社1か月で試用期間中(試用期間3か月)に解雇した事案で、期待した技術水準に達する見込みがないと判断したことは合理的として解雇有効としました。
会社は解雇理由を「貴殿は弊社の溶接担当社員募集に応募され、弊社も貴殿の履歴書、職務経歴書により、溶接を長年に亘り経験し、専門技術を習得されているという前提で採用させていただきました。しかしながら、入社後の貴殿の溶接の技量は弊社が要請していた基準に全く及ばず、弊社としてもその都度指導してまいりましたが、貴殿において技能の向上が認められず、また改善する意欲も認められなかったため、上記のとおり解雇することになりました。」とし、①溶接経験の即戦力として採用したこと、②溶接の技量が要請していた基準に全く及ばなかったこと、③指導をしたが技能の向上がなくまた改善する意欲も認められなかったということを理由にしています。
大口の受注や大型機の製造に加え、c課長やg相談役の体調不良が重なり、溶接グループの他の社員が繁忙となったため、即戦力となる経験者を雇い入れる必要があったこと、求人票にも「溶接(経験者)」等と記載していたこと、原告から提出された添え状、履歴書及び職務経歴書には「私は、手溶接、半自動溶接はもとより、ステンレス、アルミニウム、チタン等のTIG溶接(アルゴン溶接)を主に経験してきました。板厚も1mmから20mm位までの、あらゆる形状のものを製作してきました。」、「製造(TIG溶接が得意です)」、「製造(受注生産品を含む)、生産技術、検査、技術指導(TIG溶接)等、様々な業務」をこなしたこと、「金属加工する会社でアルミ溶接という専門技術にであい、技術の習得に励む。社内では様々な仕事があったが(機械加工、組立、その他の溶接)、持ち前の手先の器用さで、アルミ溶接の専任として勤務」したこと、資格として「ガス溶接技能講習」「アーク溶接技能講習」等を受講したことなどが記載されていました。
会社は、原告が入社後にどのような作業をして、どのくらいの出来だったかなどを記録に残していました。
作業内容 個数 所要時間 作業日
上蓋ストッパー 44個 3時間 11/12
上蓋ストッパー 70個 4時間 11/15
圧力スイッチカバー 50個 16時間 11/12,13,14,15
火傷防止スプリング(大) 51個 1時間 11/16
引っ掛けドライバー(大) 60個 4時間 11/16
ヤケド防止スプリング(小) 100個 4時間 11/22
上蓋ストッパー 140個 18時間 11/22,26,27
上蓋ストッパー 100個 10時間 11/22,26,27,28
原告が製作したもののうち、商品にならないものとして被告に保管されていたもの。上蓋ストッパー354個中339個/圧力スイッチカバー50個中49個/引っ掛けドライバー(大)60個中58個。
原告は、d課長から溶接不良の箇所をマーカーで示しながら、溶接が過剰な部分があり、ムラが生じていることや、溶接すべき部分がずれていることなど、溶接不良の原因について具体的な指摘を受けていたにもかかわらず、被告代表者との面談において、溶接のポイントがずれているという指摘がいかなる趣旨であるか理解できないなどと述べその後も溶接不良が改善されませんでした。
裁判所は、①原告が本件指導書を示されるまでに製作した製品は合計で数百点に及び、その量は原告の技術水準を判断するのに十分であったこと、②これらの製品のほとんどは商品にならないものであったこと、③溶接不良の原因を指摘されても、その指摘がいかなる趣旨であるか理解できないなどと述べ、溶接不良が改善されなかったことなどを踏まえて、試用期間の満了を待たずに、期待された技術水準に達する見込みがないと判断したことは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められると判断しました。ただこの事案でも、そもそもどのようなことが期待されて入社したのかが争いになっています。したがって即戦力であることや能力を期待して採用したことを書面で残した方がよいですし、能力が基準に達しないことの証明として、数値で示すことが非常に重要です。
この記事の監修者:岸田 鑑彦弁護士

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 岸田鑑彦(きしだ あきひこ)
【プロフィール】
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。平成21年弁護士登録。訴訟、労働審判、労働委員会等あらゆる労働事件の使用者側の代理を務めるとともに、労働組合対応として数多くの団体交渉に立ち会う。企業人事担当者向け、社会保険労務士向けの研修講師を多数務めるほか、「ビジネスガイド」(日本法令)、「先見労務管理」(労働調査会)、労働新聞社など数多くの労働関連紙誌に寄稿。
【著書】
「労務トラブルの初動対応と解決のテクニック」(日本法令)
「事例で学ぶパワハラ防止・対応の実務解説とQ&A」(共著)(労働新聞社)
「労働時間・休日・休暇 (実務Q&Aシリーズ) 」(共著)(労務行政)
【Podcast】岸田鑑彦の『間違えないで!労務トラブル最初の一手』
【YouTube】弁護士岸田とストーリーエディター栃尾の『人馬一体』
その他の関連記事
キーワードから記事を探す
当事務所は会社側の労務問題について、執筆活動、Podcast、YouTubeやニュースレターなど積極的に情報発信しております。
執筆のご依頼や執筆一覧は執筆についてをご覧ください。