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残業代請求事件において原告側が提出したLINEの内容の信用性を認めて労働時間を認定した裁判例(大阪地裁R6.12.12判決)をご紹介致します。
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目次
被告会社は建築工事(建物リフォーム)業等を主たる目的とする株式会社です。
被告Bは被告会社の代表者です。代表者も会社法429条1項の損害賠償を請求されました。
原告は、令和元年6月15日に入社し、工事部(実際に屋根の修繕等のリフォーム工事を行う)に所属しており、令和3年9月30日に退職しました。
被告会社では、始業時刻はタイムカードを打刻させていましたが、終業時刻については特に管理をしていませんでした。
本件の主な争点は労働時間(始業・終業時刻、休憩)です。
被告会社では、出勤が7時30分を過ぎた場合、皆勤手当を不支給とし、給与明細に「遅刻」と記載していました。
また、遅刻罰金名目で賃金控除を行っていました。
従業員は、会社に出勤して打刻後、営業活動の練習や朝礼を行っていました。
一方、被告会社から、明示、黙示の早出残業命令はなく、7時30分前の労働が義務付けられていませんでした。
裁判所はこれらの事実を認定し、7時30分より早い打刻のある日は7時30分、遅い打刻のある日はその時刻を始業時刻としました。
原告は、補修工事等を終えて現場を出る時刻や業務内容、原告主張の終業時刻に関するメッセージが記録されたLINEを証拠として提出しました。
これに対し被告は、LINEメッセージは後日割増賃金を請求する目的で意図的に作成されたものであり、信用性に欠けると主張しました。
この点、裁判所は以下のように判断し、LINEの内容は基本的に信用できるとしました。
そもそも使用者は労働時間を管理する義務を負っているが、被告会社は終業時刻については一切管理を行っていなかった。
LINEメッセージは、原告に不利な内容もある(休憩時間を長くとった、天候の関係で8時49分には終業した)。
一方、被告会社は客観的な事実や証拠等との矛盾等を指摘せず、概括的主張をするにすぎない。
なお、LINEの記録がない期間についても、原告は就労状況は変わらないと供述しており、これを疑わせる事情も特段存在しないことなどからすれば、LINEの認定結果に基づき推定計算することが許容されるとしました。
このようにLINEの信用性を肯定しつつ、終業時刻については、原則として現場を出た時刻と判断しました。その理由は以下の通りです。
① 原告は会社の近隣に居住しており、社用車を会社に戻す必要があったことを勘案しても、現場から会社への移動については通勤(退勤)の一環とみる余地がある。
② 原告が会社に戻って作成していたとする日報は極めて簡素な内容であり、記載の時間、場所について会社から指定はない。
③ 原告が帰社後、翌日の作業のために荷物の入替えをしていたのは3、4日置きに1回程度であった。
④ 会社は帰社までに寄り道を禁じたり、現場から会社に直行するよう指示したりすることはなく、営業部の中には社用車で直帰が許されていた者もいた。
⑤ LINE上も現場を出て以降従事した具体的な業務内容が明確でない日が多数ある。
被告会社では休憩時間は1時間とされていましたが、裁判所は以下の事情から30分と認定しました。
① LINE上は、取得できた休憩時間が30分程度であったことをうかがわせる多数のメッセージが存在し、中には全く休憩が取れなかったとのメッセージもある。
② 一方、所定の休憩を取れていたとの証拠はない。
③ 会社が従業員の休憩時間を把握したり、1時間の休憩時間を取得するよう促したりした形跡もない。
原告は会社に対し、賃金債権を有しており、これを超えて原告に未払賃金相当額の損害が発生したことを認めるに足りる的確な証拠はないとして、被告Bについては会社法429条1項の損害賠償責任を負わないと判断しました。
被告会社が主張するように、労働者が後日残業代請求をする目的でLINEメッセージを残していた場合、自分に有利な記録を残そうとしないとも限らず、どこまで信用できるのかという問題があると思います。
この点、本件では、被告会社が終業時刻を全く管理していなかったことが大きいかと思います。
法律上労働時間の上限が設定され、労働時間把握に関する厚生労働省のガイドラインも出ている状況下、全く労働時間を管理していない会社は少なくなったと思いますが、管理をしていない場合、それによる不利益は会社側が負わされることが多いと思います。
本件では、裁判所から、会社が客観的な証拠や事実との矛盾を指摘する等の具体的主張をしていないことを指摘されていますが、このような立証を後になって行うことは相当難しいと言えます。
タイムカードについては、実労働時間と差異が生じることがあるにしても、本件の始業時刻の認定のように、残業を否定する場合にも使われますので、このような記録を残すことは、やはり大切ではないかと思います。
この記事の監修者:岡 正俊弁護士
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