無断欠勤

無断欠勤

3日ルール

中国の就業規則は無断欠勤3日以上を即時解雇事由としている場合が多い。

日本の場合は、無断欠勤14日以上、もしくは無断欠勤10日以上の場合を即時解雇事由とすることが多いが、中国の場合、秩序維持を重視するためか、無断欠勤3日以上の就業規則が多く、裁判例でもこの種の規定自体は有効であると判断されている。

日本の場合は一定期間以上の無断欠勤のみを懲戒解雇事由と定めているためか、無断欠勤を理由とした解雇問題が訴訟になる事例は少ないが、中国の場合は無断欠勤を3日間すれば即時解雇が就業規則可能であること、経済補償金が全く支払われないことから、従業員側も様々な理由をつけて反論をして、即時解雇の有効性を争うことがある。

無断欠勤解雇問題の実態

Ⅰ 元々退職させたい従業員を解雇している

多くの場合、元々何らかの問題があって退職勧奨をしたり、業務上の注意をした後に、当該従業員が会社に何も告げずに欠勤を行い、これを機会に無断欠勤を理由に解雇をする場合が多い。

そのため、無断欠勤を理由とした即時解雇ではあるけれども、実際は企業が当該従業員の不正を疑っていたり、業務態度不良であったりするなどのトラブルが背後に隠れていることがある。

Ⅱ 病気休暇問題と併せて問題になる

無断欠勤解雇と病気休暇は実は関連することが多い。

中国では、業務とは関連の無い私傷病であっても治療が必要であれば、勤続年数に応じて病気休暇(有給)を取ることができ、法律や条例で定める医療期間中は、企業は解雇することができない。

交通事故や骨折などの明らかな怪我や病気であれば企業も問題としないが、最近「精神病」や「腰痛」で病気休暇を取ろうとしている従業員が増えているため、企業も納得のできない病気休暇申請を認めず、無断欠勤扱いにして解雇をしてしまう場合がある。

残念ながら、この種の病気休暇関連の無断欠勤解雇トラブルで会社の主張が労働仲裁や裁判所で認められることは少ないため、冷静な対応が必要となる。

Ⅲ 無断欠勤問題でも立証が問題となる

無断欠勤問題でも立証が問題となることが多い。

日本ではなかなかないことであるが、「そもそも自分は欠勤していない」もしくは「ショートメールで現場の上司に欠勤の許可をもらっている」と反論されることがある。そのような反論は容易に再反論できるはずである。

しかし、あるはずのタイムカードが消えていたり、なぜか上司が欠勤の許可を与えていたりすることがある。無断欠勤を理由に即時解雇をする場合でも、当該従業員の反論を想定して客観的な証拠を準備する必要がある。

また、就業規則には、休暇申請手続きについて明確に書く必要がある。

例えば、休暇申請手続きには書面申請が必要である、事前に休暇申請手続きを行わず、後も必要な書類を提出しない場合、無断欠勤と看做すなどと明確に書くことが望ましい。

Ⅳ 出勤を催促する

無断欠勤を理由とした即時解雇を有効にするためには、出勤を督促する書面を会社に届け出をしている当該従業員の住所に送るべきである。

中国には日本のような内容証明郵便は無いが、中国郵便局のEMS(国際スピード郵便)などを使えば、インターネットで配達状況を確認することができる。Eメールやショートメールなどで出勤を督促することも多いが、中国では内容の改ざんが容易であるため、裁判所が証拠としての価値を認めない可能性がある。

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この記事の監修者:向井蘭弁護士


護士 向井蘭(むかい らん)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)

【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数

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