ストライキの予兆を見逃さない

ストライキの予兆を見逃さない

実は、ストライキ発生前に職場で色々な噂が流れることがある。例えば「今年も賃上げ幅が低いと製造部門のリーダーが大量に退職するかもしれない」などの噂である。

根も葉もない噂であることもあるが、後から振り返ると根拠にもとづくものである場合が多い。

また、特定の従業員が事前に警告をしてくる場合も多い。古参幹部が「総経理、今回の賃上げ幅も低いと取り返しがつかないことになりますよ」等の警告を行ってくる場合がある。

古参幹部は、現地従業員の情報網から事前にストライキが起きることを察知しているため、最後に警告してくるのである(脅しとも受け取れる場合もある)。経営陣はいかにこのストライキ発生の前触れに気づくかが重要になる。

実務では様々の原因でストライキが起きることがあるので、ストライキの原因を類型化することが難しい。

ただ、通常経営の中で起きたストライキには「日本人管理者と中国スタッフの間でコミュニケーションがよくできていない」と言った共通の原因があると考えられている。

言葉の問題があるゆえに、まして管理者と従業員の間に架け橋となる工会組織は存在しないとか、工会があるが無視されているとかの問題があるので、長い間で蓄積されている従業員側の不満がどこかのタイミングで爆発してしまうことが多い。

ストライキの現場で、「なぜ従業員たちと相談せず勝手に決めるんだ」とよく耳にする言葉であるが、もしかするとこれが本音かもしれない。

当然ながら、前述したのも一律ではない。会社が発表した後に僅かの数人が会社の方針に反対し多くの従業員を煽動したことによりストライキまでに発展したケースもある。実務では、会社がリストラを行う際にこのようなケースがよく発生している。

中国人従業員は日本人経営者をシビアに観察している。中国人従業員が「この総経理に話をすれば何とかしてもらえる。」「この副総経理は言ったことは必ず実行する」と思えば、自然に中国人従業員は日本人経営者に情報を集めようとする。

ストライキに関する事前情報もしくは仮にストライキが起きたとしても、日頃の信頼関係があれば、予防や解決に至る貴重な情報が事前に漏れてくることがある。日頃の信頼関係の蓄積が重要となる。

また、会社は職場に関する情報収集を複数の従業員ルートを通じて行う必要がある。

日本人経営者は、日本語が流暢な中国人につい色々頼ることも多いが、情報内容が一面的である場合もあり、特定の従業員からの情報ではなく、別ルートの中国人従業員から情報収集が出来るように工夫する必要がある。様々な権限を有する日本人上司が中国語が流暢ではなくとも積極的に中国人従業員とコミュニケーションを取るように努力すれば、次第に中国人従業員も様々な情報提供を行うようになる。職場の人間関係が、日本人(日本語が分かる中国人)対中国人で固定化されないようにしなければならない。

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この記事の監修者:向井蘭弁護士


護士 向井蘭(むかい らん)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)

【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数

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