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取引先の担当者から従業員がセクシャルハラスメントを受けた場合、企業はどのように対応すべきか解説します。
取引先や顧客からのセクハラも法律違反にあたり、企業には従業員を守るための対応義務があります。
本記事では、企業が問われる法的責任、被害相談を受けた際の具体的な対応フロー、そして問題を未然に防ぐための予防策について詳しく説明します。
目次
取引先や顧客からのセクハラであっても、法律上の「職場におけるセクシュアルハラスメント」に該当し、会社は従業員のために適切な措置を講じる義務を負います。
この義務は、男女雇用機会均等法によって定められており、事業主は相談体制の整備や事後の迅速かつ適切な対応を行わなければなりません。
加害者が社外の人間だからといって、問題を放置することは許されず、従業員の安全な就業環境を守る責任があります。
セクハラへの企業の対応と防止については「[弁護士が教えるセクシュアルハラスメント(セクハラ)対応と防止](https://www.labor-management.net/laborcolumn/055/)」で詳しく紹介しています。
男女雇用機会均等法第11条では、職場におけるセクハラを防止するため、事業主に対して雇用管理上の措置を講じることを義務付けています。
具体的には、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知すること、相談に対しその内容や状況に応じ迅速かつ適切に対応すること、セクハラの再発防止に向けた措置を講じることなどが求められます。
この措置義務は、取引先や顧客など、自社の従業員以外の者が行うセクハラに対しても適用されるため、企業は社外で発生した問題にも真摯に対応する必要があります。
厚生労働省の指針では、取引先、顧客、患者、学校の生徒などもセクハラの行為者になり得ることが明記されています。
また、「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、出張先や業務で使用する車中、接待の席なども含まれます。
したがって、従業員が取引先との打ち合わせや会食の場でセクハラ被害に遭った場合、それは「職場におけるセクハラ」に該当します。
企業は、自社の管理が及ばない場所で発生した事案であっても、従業員からの相談があれば、雇用管理上の措置義務を果たさなければなりません。
取引先とのセクハラ問題への対応を怠った場合、企業は法的な責任を問われる可能性があります。
従業員が被害者となったケースでは、安全な労働環境を提供する「安全配慮義務」違反が問われます。
一方で、自社の従業員が加害者となった場合には、その監督責任として「使用者責任」を負うことになります。
これらの法的責任を理解し、適切な対応をとることが、企業のリスク管理において極めて重要です。
企業は、労働契約法第5条に基づき、従業員が生命や身体などの安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする「安全配慮義務」を負っています。
従業員が取引先からセクハラを受けている事実を認識しながら、会社が何らの対策も講じずに放置した結果、従業員が精神疾患を発症するなどの損害を被った場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求をされる可能性があります。
企業は、被害の訴えがあった際に迅速な事実確認や取引先への申し入れなど、従業員を守るための具体的な行動をとる責任があります。
自社の従業員が取引先の従業員などに対してセクハラを行った場合、企業は民法第715条に定められる「使用者責任」を問われることがあります。
これは、従業員が「事業の執行について」第三者に損害を与えた場合、会社もその損害を賠償する責任を負うというものです。
判例では、セクハラが業務時間外や会社の外で行われたとしても、業務との関連性が認められれば使用者責任が成立するケースがあります。
加害者個人だけでなく、企業も被害者に対して損害賠償責任を負うリスクを認識しておくべきです。
タクシー車内でのセクハラと使用者責任については「[飲み会帰りのタクシー車内でのセクハラと使用者責任](https://www.labor-management.net/laborcolumn/111/)」で詳しく紹介しています。
従業員から取引先によるセクハラ被害の相談を受けた場合、企業は迅速かつ慎重に対応を進める必要があります。
対応のフローは、まず被害者からの丁寧なヒアリングによる事実確認から始まります。
次に、確認した事実をもとに取引先企業へ再発防止を要請し、最終的に被害を受けた従業員の心のケアと就業環境の改善までを一貫して行うことが求められます。
最初のステップとして、被害を受けた従業員から事実関係を詳細に、かつ丁寧に聞き取ることが最も重要です。
ヒアリングは、プライバシーが確保された静かな場所で行い、相談者の精神的な負担に配慮しながら進めます。
いつ、どこで、誰から、どのような言動があったのかを具体的に確認し、記録に残します。
この際、相談者を責めたり、憶測で判断したりすることは二次被害につながるため、絶対に避けるべきです。
あくまで中立的な立場で、客観的な事実の把握に努めます。
社内での事実確認が完了したら、次に取引先企業に対して正式に問題を提起します。
まずは相手企業のコンプライアンス担当部署や人事部に連絡を取り、調査で把握した客観的な事実を伝えます。
その上で、相手企業側での事実調査と、加害者への適切な措置、そして実効性のある再発防止策を講じるよう、毅然とした態度で要求します。
感情的にならず、あくまでビジネス上の問題として冷静に対処することが、関係性を維持しつつ問題を解決する鍵となります。
取引先への対応と並行して、被害を受けた従業員の精神的なケアと就業環境の整備を進めます。
セクハラ被害は従業員の心に大きな傷を残すため、産業医との面談や専門のカウンセリングを受けられる体制を整えることが有効です。
また、当該従業員が安心して業務に復帰できるよう、本人の意向を確認した上で、一時的に取引先の担当から外したり、必要であれば配置転換を検討したりするなど、具体的な就業環境の改善策を講じることが企業の責任として求められます。
セクハラ問題は、発生後の対応だけでなく、そもそも発生させないための予防策が極めて重要です。
企業としては、ハラスメントに関する方針を明確にし、それを従業員に周知・啓発するための研修を定期的に行うことが基本となります。
また、万が一問題が発生した際に、従業員が安心して相談できる窓口を設置し、その存在を常に知らせておくことで、問題の早期発見と解決につなげます。
全従業員を対象としたハラスメント研修を定期的に実施することは、有効な予防策の一つです。
研修では、どのような言動がセクハラに該当するのか、法的な背景や会社の対応方針などを具体的に説明します。
特に、取引先との会食や接待の場など、社外でのコミュニケーションにおいて注意すべき点を事例を交えて周知することで、従業員の意識を高めることができます。
管理職には、部下から相談を受けた際の適切な対応方法を学ばせるなど、役職に応じた内容を盛り込むとより効果的です。
男女雇用機会均等法では、事業主に対してセクハラの相談窓口を設置することが義務付けられています。
人事部やコンプライアンス部門に窓口を設置するほか、外部의専門機関に委託する方法もあります。
重要なのは、窓口の存在を全従業員に周知し、相談しても不利益な扱いを受けないことを明確に伝えることです。
相談担当者には守秘義務があることを徹底させ、従業員がためらうことなく声を上げられる環境を整えることが、問題の潜在化を防ぎ、健全な職場風土を醸成します。
セクハラ・パワハラ事案の相談については「[セクハラ・パワハラ事案の相談](https://www.labor-management.net/laborcolumn/035/)」で詳しく紹介しています。
取引先とのセクハラ問題に関して、企業担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
明確な物証がなくても、セクハラを訴えること自体は可能です。
録音やメールなどの客観的な証拠がなくても、被害者本人や第三者の具体的な証言が重要な証拠となり得ます。
まずは会社や専門機関の相談窓口に相談し、事実関係を詳細に伝えることが問題解決の第一歩です。
就業規則に懲戒事由として明記されており、行為の態様が悪質で、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められれば、解雇は可能です。
ただし、解雇は非常に重い処分であるため、事実関係を慎重に調査し、行為の悪質性や頻度などを総合的に考慮して判断する必要があります。
取引先からのセクハラに対し、企業は従業員を守るための安全配慮義務を負っています。
従業員から被害の相談があった場合は、まず事実関係を丁寧にヒアリングし、取引先企業へは毅然とした態度で再発防止を要請することが重要です。
同時に、被害従業員のケアと就業環境の改善も欠かせません。
問題発生を未然に防ぐため、ハラスメント研修の定期的な実施や相談窓口の周知徹底など、日頃からの予防策を講じておく必要があります。
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この記事の監修者:樋口陽亮弁護士
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