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弁護士の平野剛です。今回は、運送会社との委託契約に基づき業務を行っていたドライバーが労働基準法(以下「労基法」)上の労働者に該当するかが問題となった裁判例(東京地裁令和6年5月16日判決)をご紹介します。
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目次
昨年11月にフリーランス新法が施行され、今後は同法の適用対象となる個人事業主と同法が適用されない労基法上の労働者との区別が問題となるケースが増えてくるかもしれません。
労基法上の労働者該当性については、一般に、①使用従属性の有無(ア 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する許諾の自由の有無等、イ 業務遂行についての指揮命令等、ウ 時間的場所的拘束性、エ 代替性)、②報酬の労務対償性の有無、③事業者性・専属性の有無といった考慮要素をもとに判断されます。
本件の被告会社は、貨物自動車運送事業等を行う会社で、原告は被告との間で運送委託基本契約書(以下「本件基本契約書」)を取り交わして被告の指定した商品等を運送する業務(以下「本件業務」)を行っていました。
被告は、株式会社c(以下「c社」)を通じてd株式会社の荷物の配送業務(以下「dの業務」)や、ECサイトであるeの荷物の配送業務(以下「eの業務」)を受託していました。なお、eの荷物の配送全般について、f株式会社(以下「f社」)が管理をしていました。
原告は、本件基本契約に基づき、令和●年7月まではdの業務を、同年8月から同年9月まではeの業務を行っていました。
判決文から確認できる本件基本契約書に定める主な内容は以下のものになります(もう少し情報が欲しいですが、この程度しか労働者該当性に関連する定めはなかったのかもしれません)。
裁判所は、以下の事実を取り上げ、「原告が本件業務を遂行するに当たって被告の指揮監督が及んでいたと評価することはできない」と述べました。
なお、配送時刻・配送先の指定、業務日報作成の義務付けについては、「配送という業務の性質上当然のものといえ、業務遂行上の指揮監督を基礎付けるものとはいえない」と述べました。
裁判所は、以下の事実を取り上げ、「被告の原告に対する時間的、場所的な拘束はなかった」と述べました。
裁判所は、本件業務に関しての許諾の自由について、「原告の受託する本件業務がdの業務からeの業務へと変更になる際に原告と被告との間で話合いが行われた」「eの業務以外にも、被告がcから受託している他の配送業務が存在した」ことを取り上げ、「原告に許諾の自由がなかったものとはいえない」と述べました。
また、個々の仕事の依頼に対する許諾の自由について、「dの業務及びeの業務のいずれも、原告が業務可能な日を事前に被告に申告し、その申告を受けて原告の稼働日が決まっていたことが認められることからすれば、個々の仕事の依頼に関しても原告に許諾の自由がなかったとはいえない」と述べました。
裁判所は、dの業務に係る業務委託料が「配送サービスの種類ごとに決められた単価に個数を乗じて算出する出来高払い方式」であることに加え、eの業務に係る業務委託料は「単価に稼働日数を乗じて算出されていた…ものの、当該単価の算定において原告の労務提供時間との結び付きを認めるに足りる的確な証拠はない」と述べ、「いずれについても、労務対償性は弱いものといえる」と評価しました。
原告が被告から賃借したリース車両を使用して業務を行っていた点については、「原告所有の車両を使用することもできる仕組みであった中で…原告は、被告からリース車両を賃借することを選択したこと」、「リース車両の車両リース代や保険費用をはじめとするメンテナンス費用を原告自身が負担していたこと」を指摘し、「リース車両を使用していたことをもって、原告の個人事業主性が否定されることにはならない」と述べました。
裁判所は、上記の⑴~⑶のまとめとして、「原告と被告との間での本件業務に関し、その実態に照らして、指揮監督下での労務提供があったと評価することはできない」と述べたうえで、⑷、⑸もあわせ、「本件基本契約の性質が労働契約であったとはいえない」と結論付けました。
トラック運転手の労基法上の労働者性については、これを否定した最高裁平成8年11月28日判決(横浜南労基署長事件)があります。当然、裁判官はこの判決が念頭にあったと思われますが、同事件では、ドライバーが自己所有のトラックを持ち込んで業務に従事していたり、ガソリン代、修理代、高速代等を全てドライバーが負担したりしていた点で事業者性がかなり強い事案でした。
この種の事案に何件も関与してきた者からすると、本件判決は詳細な点まで踏み込んだ事実認定や検討がなされていないように見えます。例えば、本件ではc社の担当者が実質的に原告への管理を行っていたようですが、被告会社とc社との関係性(指揮命令系統)、c社と原告との間での稼働日に関する連絡状況(事業会社側の事情で稼働日が変更がなされていないか)、稼働日における原告と管理者との間での連絡状況、配送業務以外の業務従事の有無・内容、報告を求められる業務日報の記載内容など、もう少し検討されていてもよい気がしました。
本件の被告会社による原告に対する指揮監督がほとんどなされていないように思われ、結論としては労働者該当性が否定されることでよいように思いますが、上記のような項目の中から指揮監督関係や拘束性を強めるような事情が出てくれば、結論が変わってくる可能性もないわけではないと思います。
ドライバーの労働者性が否定された事案として1つの参考となると思い、取り上げました。
この記事の監修者:平野 剛弁護士
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