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懲戒処分とは、企業秩序に違反した従業員に対して会社が科す制裁罰のことです。
この処分を行うにあたっては、その種類や判断基準、適切な手続きを理解することが非常に重要となります。
懲戒処分は、企業秩序を維持し、他の従業員への示しをつけることにあり、この目的を達成するために行われます。
懲戒処分の中には、懲戒解雇や諭旨解雇といった、従業員にとって最も重い処分も含まれます。
懲戒処分とは、従業員が会社の定めたルールや秩序に違反した場合に、会社がその従業員に対して行う制裁措置です。
これは企業秩序を維持するために必要な制度として法律上認められています。
従業員が労働契約に基づき労務を提供する義務を負うとともに、会社の規律や秩序を遵守する義務も負っているため、これに違反する行為に対して会社は懲戒権を行使することができるのです。
懲戒処分の主な目的は二つあります。
一つは、問題行動を起こした従業員本人に制裁を加え、将来的な改善を促すことです。
もう一つは、他の従業員に対して、特定の行動が会社のルールに違反すること、そして違反行為には制裁が伴うことを明確に示すことで、社内の秩序を維持することです。
これにより、企業全体の規律と風紀を保つことが可能となります。
懲戒処分には、違反行為の性質や重さのレベルに応じて、いくつかの種類があります。
一般的に、処分の重さは段階的に定められており、就業規則において具体的な種類とそれに対応する事由を定めておくことが重要です。
一般的な懲戒処分の種類としては、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、そして最も重い懲戒解雇などがあります。
これらの処分は、企業によって「一覧」として就業規則に明記されています。
懲戒処分の中で最も軽いとされるのが、戒告と譴責です。
戒告とは、従業員に対して口頭または書面で厳重注意を行い、将来同様の行為を行わないよう戒める処分です。
一方、譴責とは、戒告よりもやや重く、始末書を提出させて同様に注意・警告する処分を指します。
これらの処分は、従業員の経済的な不利益を伴わないことが多いですが、懲戒処分を受けたという事実がその後の人事評価に影響を与える可能性はあります。
減給は、従業員の給与から一定額を差し引く懲戒処分です。
労働基準法により、一度の事案に対する減給の額は平均賃金の1日分の半額以下、また複数事案であっても一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下と上限が定められています。
これは、従業員の生活保障の観点から設けられた制限であり、この上限を超えた減給は違法となります。
出勤停止は、従業員に対して一定期間の就労を禁止する懲戒処分で、停職と呼ばれることもあります。
この期間中、従業員は会社に出勤することができず、原則として給与は支払われません。
出勤停止の期間に法律上の明確な上限はありませんが、あまりに長期間に及ぶ場合は懲戒権の濫用とみなされる可能性があります。
就業規則には通常、出勤停止の期間の上限が定められており、一般的には7日から30日程度が多い傾向にあります。
降格は、従業員の役職や職位、等級などを引き下げる懲戒処分です。
これにより、従業員の基本給や役職手当などが減額されることが一般的です。
降格は、従業員のキャリアや収入に大きな影響を与える処分であるため、就業規則に明確な根拠と基準を定めておく必要があります。
降格の有効性は、その理由に客観的な合理性があり、社会通念上相当と認められるかどうかが判断基準となります。
諭旨解雇とは、会社が従業員に対して退職を勧告し、一定期間内に自己都合退職をしない場合に懲戒解雇とする処分です。
諭旨退職もほぼ同じ意味合いで使われますが、従業員が退職勧告に応じて自己都合退職を選択した場合、懲戒解雇よりは若干緩和された扱いとなることがあります。
自己都合退職の形をとるため、退職金の一部が支給される場合もありますが、就業規則の定めによります。
従業員が勧告に応じない場合は、最終的に懲戒解雇となります。
懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重い処分であり、会社が一方的に労働契約を解除するものです。
従業員の責めに帰すべき重大な事由がある場合に行われ、解雇予告手当の支給が免除されることがあります。
また、多くの場合、退職金の全部または一部が支給されないという厳しい措置が伴います。
懲戒解雇は従業員のその後の生活や再就職に多大な影響を与えるため、その有効性は裁判においても非常に厳格に判断されます。
懲戒処分を行うにあたっては、明確な基準に基づき、懲戒の対象となる行為を特定することが求められます。
法的な要件を満たし、処分の相当性が認められる必要があります。
どのような行為が懲戒処分の対象となるかは、企業の就業規則に具体的に定めることが重要です。
懲戒処分を法的に有効に行うためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず、就業規則において、懲戒の種類と懲戒事由(懲戒処分の対象となる行為)が明確に定められ、従業員に周知されていることが不可欠です。
これは労働基準法第89条や労働契約法第15条等に定められています。
また、懲戒処分には客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であると認められる必要があります。
これらの要件を満たさない懲戒処分は、権利の濫用として無効と判断される可能性があります。
過去の判例も、これらの要件の重要性を示しています。
懲戒処分の「相当性」とは、従業員の行った違反行為の性質や態様、その他の事情に照らして、その懲戒処分の種類や程度が社会通念に照らして適切であるということを指します。
違反行為の軽重に対して、あまりに重すぎる処分は相当性を欠き、無効となる可能性があります。
相当性を判断する際には、違反行為の悪質性、会社に与えた損害の程度、従業員の反省の態度、過去の処分歴などを総合的に考慮する必要があります。
懲戒権の濫用とならないよう、慎重な判断が求められます。
懲戒処分の対象となる行為は、就業規則において具体的に定める必要があります。
一般的には、会社の秩序を乱す行為や業務遂行に支障をきたす行為が対象となります。
例えば、無断欠勤や遅刻、業務命令違反、会社の金銭や備品の窃盗・横領、ハラスメント行為(パワハラ、セクハラ、マタハラなど)、機密情報の漏洩、経歴詐称などが挙げられます。
また、会社の信用を著しく損なうような私生活上の行為が対象となる場合もあります。
懲戒処分の対象となる代表的な事例としては、以下のようなものがあります。
長期間の無断欠勤や度重なる遅刻・早退といった勤怠不良。業務上横領や窃盗などの不正行為。
同僚や部下へのパワハラやセクハラといったハラスメント行為。
会社の許可を得ていない競合他社での副業。会社の機密情報を外部に漏洩する行為。飲酒運転やその他の犯罪行為で会社の信用を失墜させるような場合も懲戒処分の対象となり得ます。
これらの事例に対する処分の程度は、事案の悪質性や会社への影響などを考慮して判断されます。
懲戒処分を適切に行うためには、定められた手続きと手順を踏む必要があります。
事実関係の正確な確認から始まり、対象者への弁明の機会付与、そして最終的な処分の決定と通知に至るまで、慎重に進めることが求められます。
この流れに沿って進めることで、処分の有効性を高めることができます。
懲戒処分を行う際には、必ず自社の就業規則に懲戒に関する規定があることを確認することが最初のステップです。
就業規則には、どのような行為が懲戒事由となるのか、そしてそれに対してどのような種類の懲戒処分があり得るのかが明記されている必要があります。
懲戒処分は就業規則に基づいて行われるため、規則に定めのない事由や種類で処分を行うことは原則としてできません。
就業規則が最新であり、従業員に周知されていることも重要です。
懲戒処分を検討する従業員の行為について、客観的な事実関係を正確に確認するための調査を行います。
関係者からの聞き取り、関連書類やデータの確認、防犯カメラ映像の確認など、可能な限りの証拠を集めることが重要です。
もし証拠がない、あるいは不十分な場合は、その後の懲戒処分の有効性が問われる可能性があります。
調査結果は報告書としてまとめ、誰が見ても理解できるよう整理しておくことが望ましいでしょう。
懲戒処分を行う前に、処分の対象となる従業員に対して、自身の行為について釈明や反論を行う機会を与えることが重要です。
これを弁明の機会といいます。
就業規則に弁明の機会付与に関する定めがある場合は、必ずその定めに従う必要があります。
定めがない場合でも、特に懲戒解雇のような重い処分を検討している場合には、適正手続きの観点から弁明の機会を与えることが望ましいとされています。
弁明の方法としては、口頭での聞き取りや、弁明書の提出などが考えられます。
事実調査の結果と対象者からの弁明の内容を踏まえ、就業規則に基づき、懲戒処分の種類と内容を決定します。
処分の内容は、行為の性質や会社への影響、従業員の反省度などを総合的に考慮し、相当性を欠かないよう慎重に検討する必要があります。
処分が決定したら、対象の従業員に対して懲戒処分通知書を作成し、書面で通知します。
通知書には、処分の種類、処分理由、就業規則上の根拠条文などを明確に記載することが重要です。
必要に応じて、社内での掲示などによる公表も検討されますが、その範囲や方法には十分な配慮が必要です。
懲戒処分を適正に行うためには、いくつかの重要な注意点があります。
これらの点に留意しないと、処分が無効となったり、従業員との間でトラブルに発展したりする可能性があります。
法的な原則や過去の判例を踏まえ、慎重な対応が求められます。
懲戒処分においては、一つの非違行為に対して二度懲戒処分を行うことは禁止されています。
これを二重処罰の禁止(一事不再理の原則)といいます。
一度懲戒処分を科した事案について、後から同じ理由で再度懲戒処分を行うことはできません。
例えば、遅刻に対して一度口頭で注意指導を行った場合、後から同じ遅刻を理由に減給処分とすることは原則として認められません。
ただし、前回の注意指導後に改善が見られず、同様の行為を繰り返すなど、新たな非違行為として評価できる場合はこの限りではありません。
懲戒処分が法的に有効であるためには、労働契約法第15条に基づき、客観的に合理的な理由があるだけでなく、社会通念上相当であると認められる必要があります。
これは、処分の種類や程度が従業員の行った行為に対して重すぎないか、他の同様のケースと比較して不均衡がないかなどを総合的に判断するということです。
過去の裁判例も参考になります。常に社会的な常識や公平性の観点を踏まえて判断することが重要です。
懲戒処分を受けた従業員の退職金の取り扱いは、就業規則の退職金規程に基づきます。
懲戒解雇の場合、多くの企業では退職金の全部または一部を支給しない、あるいは減額する旨が定められています。
しかし、懲戒解雇に至らない比較的軽い懲戒処分の場合でも、就業規則の定めに従い、退職金に影響が出る場合があります。
退職金規程に明確な定めがない場合や、定めの内容が社会通念に照らして著しく不合理な場合は、退職金の不支給や減額が認められない可能性もあるため注意が必要です。
懲戒処分を行った事実を社内に公表することについては、目的と方法に注意が必要です。
公表の目的が企業秩序の維持や再発防止のために必要な範囲であること、そして公表の方法が懲戒処分を受けた従業員のその後の更生の機会を不当に奪わないよう配慮されていることが求められます。
氏名を公表するかどうか、公表する情報の範囲などについては慎重な検討が必要です。
個人の名誉やプライバシーに配慮しつつ、企業秩序維持という目的を達成するための適切な方法を選択する必要があります。
処分の記録は会社として適切に保管しておくべきですが、その取り扱いにも注意が必要です。
懲戒処分は、企業秩序を維持するために不可欠な制度ですが、その実施にあたっては、法的な要件を満たし、適正な手続きを踏むことが極めて重要です。
処分の種類を正しく理解し、違反行為の内容に応じた適切な判断基準に基づいて、慎重に処分を決定する必要があります。
事実調査、弁明の機会付与、そして最終的な通知に至るまで、一つ一つのプロセスを丁寧に進めることで、懲戒処分の有効性を確保し、従業員との無用なトラブルを避けることが可能となります。
常に公平性と社会的な妥当性を念頭に置き、対応にあたることが求められます。
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この記事の監修者:樋口陽亮弁護士
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