団体交渉・労働組合対策でやってはいけない対応TOP10!注意点について弁護士が解説

やってはいけない対応TOP10
当事務所では、40年以上の間、労働組合との関係や交渉に悩む経営者から数多くの相談を受けてきました。弁護士が必要になるくらいですから、当事務所に相談にきた段階で既に相当こじれているケースも数多くあります。こうなる前に手を打っていたら…。
何度そう思うようなケースがあったか分かりません。

例えばある老舗メーカーでは、赤字経営が続きこのままでは会社が潰れてしまうという状況で、同業他社と比べて高い水準にあった従業員の給料を引き下げようとしました。すると、従業員の半分以上が過激な合同労組に加入して団体交渉を申し入れてきました。団体交渉は会社の会議室で行うことになり、合同労組の担当者や組合員が多数詰めかけ、席上で罵声や野次をとばしてきます。社長はどうしていいか分からず、いまの状況から逃れるために組合の要求に従い様々な文書にサインをしました。交渉のテーマは最初は賃下げだったはずが、いつのまにか賃上げ幅の交渉になっていました。もともと経営が苦しい状況なのにもかかわらず、さらに給料があがることとなり会社は資金ショート寸前の状況に陥ってしまいました。

こんなケースもあります。ある食品会社の社長が、勤務態度の悪い従業員を解雇したところ、その従業員は外部の労働組合に駆け込み会社に対して解雇の撤回を求めて団体交渉を求めてきました。社長は、なぜ解雇した社員の申立に応じなければいけないのかと団体交渉を放置してしまいます。するとある日、不当解雇を理由に元従業員から裁判で訴えられてしまいます。社長は強気の姿勢で臨みましたが、結果的に判決は解雇は無効と判断され元従業員の勝利。社長はこの元従業員に裁判期間中の給与のみならず多額の金銭を支払うことになりました。「最初の団体交渉に応じていれば、、、」社長は最初の対応が間違いだったと嘆いていました。

実際、わたしたちのところに相談にくる社長は、上記のケースのように独自の判断で行動したりして、とりかえしのつかない状態になっていることが多いです。
では、労働者との間にトラブルが起き、労働組合から団体交渉を申し込まれた際、どんな点に注意を払わなければいけないのでしょうか。

本コラムでは、企業の社長をはじめ、人事や総務の方に是非知っておいていただきたい対処法について「やってはいけない対応TOP10」としてご紹介いたします。

1、使用者側が団体交渉でやってはいけない対応TOP10

(1)上部団体の役員の出席を拒否する

会社担当者の方が一番陥りやすい間違いです。
団体交渉の議題は、会社と会社従業員の間の労働条件などですので、会社担当者の方は、会社とは何ら関係のない労働組合の上部団体の人間と何故協議をしなければならないのかと思うようです。

しかしながら、労働組合法上、使用者は、上部団体の団体交渉の申し入れには応じなければならないとしていますし、支部と会社との団体交渉であっても、上部団体の役員の参加を拒めないとされています。

会社担当者の方が明確に団体交渉への上部団体の役員の参加を拒んだ場合は、労働組合は猛烈に抗議をします。
その時点ではじめて会社担当者の方は、自分の行った行為が違法であることに気づくようです。労働組合は、会社に対し団体交渉拒否行為について謝罪を求めたりするなどして、自分のペースで団体交渉を進めることになります。
上部団体の役員の団体交渉への参加を拒否することなく、団体交渉を行いましょう。
 

(2)社内の施設や労働組合事務所を使用して団体交渉を行う

労働組合は、社内の施設や労働組合事務所(本部の事務所)を使用して団体交渉を行おうとします。後に述べますが、団体交渉は、会社施設や労働組合事務所で開催する必要はありません。団体交渉を会社施設や労働組合事務所で行うことで、そのままなし崩し的に、次回から組合活動に会社施設を使用しても良いことにつながったり、団体交渉に無用の混乱をもたらすことになります。
 

(3)就業時間中に団体交渉を開催する

労働組合が、就業時間中に団体交渉を開催するよう要求してくることがあります。後に述べますが、これを認めてしまうと、仕事を中断して団体交渉を開催することになり、後に、団体交渉開催中の賃金を支払うべきか否かが問題となります。使用者は、従業員や団体交渉や労働組合活動に費やした時間に対して賃金を支払う必要はありません。
 

(4)労働組合全員が誰であるかわかるまで団体交渉を行わない

労働組合結成直後は、誰が労働組合員なのか不明である場合があります。
会社が、誰が労働組合に加入したのかどうしても気になるので、労働組合に対し、組合名簿を提出しなさいということがあります。それだけならまだいいのですが、会社によっては、どの従業員が労働組合に加入したかわかるまで団体交渉には応じないということもあります。

労働組合は、必ずしも労働組合員が誰であるかを明らかにする義務を負いません。労働組合全員が誰であるかわかるまで団体交渉を行わないと、団体交渉拒否として不当労働行為となるおそれが強いため、労働組合全員が誰であるかわからなくとも、まずは団体交渉に応じてください。

なお、労働組合員が誰であるかは、当初はわからなくとも、団体交渉の出席者などから時間が経つと共にわかることが多いので、結成当初はあまり神経質になるべきではありません。

 

(5)団体交渉期間に労働組合が用意してきた書類にサインしてしまう

労働組合によっては、団体交渉終了後に、議事録と称した書類に会社出席者のサインを求めることがあります。会社担当者が、議事録だからまあいいかと思ってサインしてしまうことがあります。しかし、議事録でも覚書でも文書の名称は何であれ、労働協約の様式を備えてしまえば、その文書が労働協約としての効力を有することがあります。団体交渉終了後で頭に血が上っていたり、組合の圧力に押されていた場合は、通常であれば同意しない文書にサインしてしまうものです。

 
また、労働組合は、当然のことながら自分に有利なように文書を用意していますので、かなり気をつけてサインしないと会社に不利益を与えてしまいます。
したがって、まずはどのような文書であっても、今もらったばかりでよく検討できていないので、社内に持ち帰ると言って、団体交渉の場ではサインしないようにしましょう。

 

(6)組合の要求をのまないと不当労働行為になると思ってしまう

労働組合法は、使用者に対し、団体交渉に応じ、誠実に交渉する義務を課しています。労働組合の要求をのまないと不当労働行為になってしまうと勘違いしてしまう方もいます。もちろん、会社は、組合の要求に対して、会社の主張を裏付ける資料を提出したり、具体的な事実を説明する必要があります。

 
しかし、それ以上に、会社が労働組合のいうことをそのまま受け入れないと不当労働行為になってしまうというわけではありません。会社が受け入れることのできない労働組合の要求であれば、具体的な資料や論拠にもとづいて説明した上で、要求を拒否してもかまいません。
 

(7)労働組合結成後、組合員に組合員に組合を辞めるように説得してしまう

労働組合結成直後、会社が、労働組合員に対し、労働組合をやめるよう説得してしまうことがあります。もちろん、このような行為は、労働組合の運営に介入するものであり、支配介入行為として禁止されています。
労働組合員は、色々考えた上で労働組合に加入しているわけですから、会社が労働組合をやめろといって、わかりました、組合から脱退しますと言って、労働組合をやめることはありません。

むしろ、このような発言を行うことで、労働組合が会社を攻撃する材料を与えてしまうことになります。
 

(8)関係会社の問題なのに親会社が団体交渉に参加してしまう

比較的規模の大きな会社であれば、多数の関係会社を有していると思います。その結果、親会社本体ではなく、関係会社の従業員が合同労組に駆け込むことがあります。合同労組は、このような場合、従業員が勤務している関係会社だけではなく、親会社に対しても団体交渉を要求することが多々あります。

合同労組と関係会社の従業員との問題ですから、親会社は全く関係のないはずです。にもかかわらず、合同労組によっては、執拗に親会社に対し団体交渉拒否であると述べるところもあり、会社によっては、これに応じてしまうところもあります。一度団体交渉に応じれば、その後は団体交渉に応じざるを得なくなります。法的には、関係会社と親会社が一定以上の密接な関係にあれば、団体交渉応諾義務があるといわれていますが、まずは親会社は団体交渉には出るべきではありません。

 

(9)掲示板の貸与や就業時間中の組合活動を認めないと不当労働行為になると思ってしまう

複数の従業員が組合を結成した場合、労働組合は、便宜供与を求めることがあります。労働組合法第7条3号は、不当労働行為の一類型とし「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を禁止しています。

 

使用者が労働組合の活動を援助することは原則として違法なのです。もっとも、第7条3号但し書きは必要最小限の広さの事務所の供与をすることを許していますが、これも必要最小限の広さの事務所を供与することを許すにすぎません。

また、会社は、施設管理権といって、建物や設備を会社の裁量のもとに管理する権利を有しています。
したがって、会社は、施設管理権にもとづいて、組合に掲示板を貸与することもできますし、貸与しないこともできるのです。

就業時間中の組合活動については、従業員は、就業時間中は職務に専念する義務がありますので、会社がその義務を履行することを求め、就業時間中の組合活動を禁止することは原則として自由です。
会社の施設や人員に余裕がないのであれば、そのことを具体的に説明して便宜供与を断っても何ら不当労働行為にはあたりません。
 

(10)訴訟中であることを理由に団体交渉を拒否してしまう

従業員が合同労組に加入し、団体交渉を続けても、会社と合同労組が合意に至らない場合が多々あります。合同労組の中には、団体交渉で解決が図れないと判断した場合、労働審判を申し立てるなどの法的手続きを取るものがあります。

なお、労働審判は平成18年に新設された制度ですが、労働審判を申し立てることで、短時間で(3回期日以内で)個別労使紛争を解決できることが多く、近年労働審判の申立件数が増大しています。

 

もっとも、法的手続きをとったとしても、合同労組の中には、訴訟や労働審判と平行して団体交渉を申し入れるものもあります(推測の域を出ませんが、労働組合は、なるべく弁護士を通さずに解決したいようです)。この場合、往々にして、会社の担当者の方が、労働審判などの訴訟で争っているのであるから、重ねて団体交渉を開催する必要はないということがあります。

訴訟が現在進行しているからといって、団体交渉を拒否することはできません。原則として団体交渉には応じてください。もっとも、議題は現在進行している訴訟と対象が重複するでしょうから、団体交渉では、組合の要求、質問に対して、「訴訟で主張しているとおり、会社は○と考えている」と述べざるを得ないと思います。
 

2、団体交渉に関する解決事例とその他参考情報

団体交渉の解決事例として、当事務所では以下のようなものがございます。どのようにして弁護士と共に、団体交渉に際して生じるトラブルを解決するのかのご参考にしてください。

また、労働問題で起きる代表的なトラブルや弁護士に相談すべき理由について解説した記事もございますので、ぜひご一読ください。
 

団体交渉に関する解決事例の一部

・セクハラ等を行った従業員に配転命令を行ったところ組合へ加入し、パワーハラスメントであると主張して団体交渉を要求してきたが、パワーハラスメントでないことを立証し解決に導いた事例

・在籍中の従業員が外部ユニオンに加入し、残業代請求を行った事例

・解雇した従業員から、組合を通じて残業代請求、慰謝料請求などを求められた事例

 

 

その他参考情報

・労働問題で起きるトラブルとは。労働問題は弁護士に相談するべき?

 

3、団体交渉には専門的な知識が必要です。まずは弁護士にご相談ください。

団体交渉については本記事でも記述したように気を付けなければいけない点が多く、労働組合側は主張を通すために専門家に相談するなど周到に準備してくることもあります。

団体交渉に不慣れな場合や有利に進めたい場合には、弁護士に相談することが重要です。弁護士であれば、団体交渉の場に同行し、交渉の代理人として立ち合いも可能です。

当事務所でも団体交渉に対応しており、以下のような料金体系で対応を承っております。また、団体交渉を含め労働法分野で、社会保険労務士の先生方のお手伝いをさせて頂いております。

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使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。500社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。

団体交渉についても、当事務所は社労士の先生からのご紹介によるご依頼も多数引き受けており、社労士の先生方が手に負えないようなハードな組合問題も多数経験しております。

まずはお気軽にお電話やメールでご相談ください。

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  • ※セカンドオピニオンも対応可能でございます。
  • ※使用者側からのご相談のみ受け付けております。労働者側からのご相談は受け付けておりません。
  • ※お問合せ多数で電話が繋がらない場合でも、問い合わせフォームからご連絡いただければ、速やかに折り返しお電話させていただきます。

 

4、当事務所では労働問題に役立つ情報を発信しています。

この記事の監修者:杜若経営法律事務所編集部

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