派遣社員の問題行動への対処法|トラブルなく契約終了する手順

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派遣社員の問題行動は、職場の生産性や雰囲気に悪影響を及ぼす可能性があります。
しかし、派遣社員は派遣先が直接雇用しているわけではないため、対応には独自のルールが存在します。
適切な手順を踏まずに対応すると、派遣元企業や労働者とのトラブルに発展しかねません。

この記事では、派遣社員の問題行動への具体的な対処法から、契約を円満に終了させるための手順、そしてトラブルを未然に防ぐための予防策までを詳しく解説します。

目次

派遣社員によく見られる問題行動の具体例

派遣社員が起こす問題行動は多岐にわりますが、多くの企業で共通して見られる典型的なパターンが存在します。
これらの行動は、業務の遅延や他の従業員への負担増につながり、放置すると職場全体の士気を下げる原因にもなりかねません。

自社で起きている事象が一般的な問題行動に該当するかを把握することは、派遣元企業とのトラブルを避けつつ、適切な対応を検討する第一歩となります。

勤怠不良|無断での遅刻や突然の欠勤が続く

無断での遅刻や連絡なしの欠勤、あるいは理由が不明確な早退が頻発するケースは、典型的な勤怠不良です。
このような行動は、本人が担当する業務が停滞するだけでなく、チーム全体の業務計画に支障をきたします。

また、他の従業員がその穴埋めをする必要に迫られ、不公平感や負担増から職場全体の不満が高まる原因にもなります。
勤怠の乱れは、業務への責任感の欠如の表れと見なされることが多いです。

勤務態度が悪い|指示に従わない・協調性がない

業務上の指示に対して反抗的な態度をとったり、自己流のやり方に固執して指示を聞き入れなかったりするケースです。
また、他の従業員との連携を拒否するなど、チームワークを著しく乱す行動も問題視されます。

このような非協力的な態度は、業務の円滑な遂行を妨げるだけでなく、職場の秩序や指揮命令系統を混乱させる要因となります。
周囲の従業員のモチベーション低下にも直結します。

スキル不足|契約で定めた業務を遂行できない

派遣契約時に想定されていたスキルレベルに達しておらず、契約で定められた業務を遂行できないケースも問題となります。
単純なミスが多発する、業務の処理速度が極端に遅い、必要なITツールを扱えないなどが具体例です。

教育や指導を行っても改善が見られない場合、業務が停滞し、教育担当者の負担も増大します。
これは、採用時のスキル確認のミスマッチが原因である可能性も考えられます。

コミュニケーションの問題|注意や指導を素直に受け入れない

業務上のミスや改善点について注意や指導をしても、素直に受け入れずに言い訳や反論を繰り返すタイプです。
自身の非を認めず、他責にしたり、指導内容を聞き流したりするため、行動の改善が期待できません。
このような態度は、指導する側の精神的な負担を増大させ、建設的な関係構築を困難にします。

成長意欲が見られないと判断されることもあります。

職場の人間関係を悪化させる言動をとる

特定の従業員に対する誹謗中傷や無視、高圧的な言動、あるいは社内の噂話を広めるなど、職場の人間関係に悪影響を及ぼす行動です。
このような言動は、職場の雰囲気を悪化させ、他の従業員に精神的なストレスを与えます。

結果として、チーム全体の生産性が低下するだけでなく、他の従業員の離職につながるリスクもはらんでおり、職場秩序の維持において深刻なトラブルの原因となります。

問題行動のある派遣社員への対処法【3ステップ】

派遣社員の問題行動に対しては、感情的に対応するのではなく、冷静かつ段階的な手順を踏むことが重要です。
派遣社員の雇用主はあくまで派遣元企業であるという点を念頭に置き、適切なプロセスで対応を進める必要があります。

このステップを無視すると、派遣元企業や労働者とのトラブルに発展する可能性があるため、慎重な対応が求められます。
ここでは、具体的な3つのステップに分けて解説します。

ステップ1:まずは現場で注意・指導し、客観的な事実を記録する

問題行動が見られた場合、まずは派遣先の指揮命令者として、その場で具体的な注意・指導を行います。

感情的に叱責するのではなく、「何が問題で、業務にどのような影響が出ているか」「今後はどう改善してほしいか」を冷静に伝えます。
そして最も重要なのが、指導の事実を客観的に記録することです。

「いつ、どこで、誰が、どのような問題行動をしたか」「それに対し、いつ、誰が、どう指導し、本人はどう反応したか」を時系列で具体的に記録します。
この記録が、後のステップで派遣元と交渉する際の重要な証拠となります。

ステップ2:派遣元の担当者へ具体的な事実を伝えて相談する

現場での指導後も改善が見られない場合は、派遣元の担当者へ連絡し、状況を報告・相談します。
この際、ステップ1で記録した客観的な事実を基に伝えることが不可欠です。
「勤務態度が悪い」といった主観的な表現ではなく、「〇月〇日、〇〇の指示に対し『できません』と返答し、業務が〇時間停滞した」のように具体的に伝えます。

派遣元は雇用主として、派遣社員への指導やカウンセリングを行う責任があります。
派遣元からも本人へ改善を促してもらうよう、協力を要請します。

ステップ3:契約を更新しない、または契約期間中に交代を要請する

派遣元からの指導を経てもなお問題行動が改善されない場合は、契約の終了を検討します。
契約更新のタイミングであれば、問題行動を理由に「契約を更新しない」旨を派遣元に伝えます。
契約期間中であっても、業務への支障が著しい、あるいは職場秩序を著しく乱すなど、契約を継続しがたい重大な理由がある場合は、派遣元に対して交代を要請することが可能です。

この場合も、これまでの指導記録や客観的な事実が、要請の正当性を裏付ける根拠となります。

注意!派遣先が派遣社員に直接やってはいけないNG対応

派遣社員への対応において、派遣先企業が良かれと思って取った行動が、法的な問題に発展するケースがあります。
派遣社員の雇用主はあくまで派遣元企業であり、派遣先は業務上の指揮命令権しか持たないという関係性を理解しておくことが重要です。
この境界を越えた対応は、労働者との直接的なトラブルを招き、企業の信用を損なうリスクも伴います。

ここでは、派遣先が絶対に避けるべきNG対応について解説します。

派遣先から直接、解雇や契約終了を告げること

派遣先には、派遣社員を解雇する権限は一切ありません。
したがって、「明日から来なくていい」「もうクビだ」といった発言は、たとえ問題行動があったとしても絶対にしてはいけません。
これは労働契約法における解雇権の濫用に該当する可能性があり、不当解雇として労働者から訴えられるリスクを伴います。

契約の終了に関する交渉や通告は、必ず雇用主である派遣元企業を通して行う必要があります。

契約内容に含まれていない業務を強制すること

派遣社員は、派遣元と派遣先の間で交わされた労働者派遣契約に定められた業務範囲内でのみ就業します。
契約書に記載のない業務を本人の同意なく指示したり、強制したりすることは契約違反にあたります。
例えば、事務職として契約している派遣社員に、清掃や電話番といった雑務を一方的に押し付けることはできません。

業務内容の変更や追加が必要な場合は、まず派遣元の担当者に相談し、契約内容の見直しを協議することが正規のルートです。

人格を否定するような過度な叱責やハラスメント

派遣社員に問題行動があったとしても、指導の範囲を超えて人格を否定したり、大勢の前で執拗に叱責したりする行為はパワーハラスメントに該当します。
いかなる理由があっても、労働者の尊厳を傷つける言動は許されません。
このような行為は、企業の安全配慮義務違反を問われ、損害賠償請求に発展する可能性があります。

指導はあくまで問題行動の是正を目的とし、客観的な事実に基づいて冷静に行う必要があります。

派遣社員とのトラブルを未然に防ぐための効果的な予防策

派遣社員の問題行動に対処することも重要ですが、そもそもトラブルが発生しないような環境を整えることが最も効果的です。
予防策を講じることで、派遣社員がスムーズに職場に適応し、能力を発揮しやすくなります。
これは結果的に、教育コストの削減や職場全体の生産性向上にもつながります。

労働者とのトラブルを未然に防ぐためには、受け入れ体制の整備と日頃からのコミュニケーションが鍵となります。

受け入れ時に業務範囲と職場のルールを明確に伝える

派遣社員の就業初日には、業務内容や指揮命令系統、職場のルールを明確に伝えることが重要です。
契約で定められた具体的な労働内容、報告・連絡・相談のフロー、タイムカードの打刻や休憩時間のルール、備品の扱い方などを丁寧に説明します。

「聞いていない」「知らなかった」という事態を防ぎ、双方の認識のズレをなくすことが、後のトラブル回避につながります。
マニュアルを用意しておくとなお良いでしょう。

定期的な面談でコミュニケーションとフィードバックの機会を設ける

業務を任せきりにせず、定期的に1対1での面談の機会を設けることが有効です。
1週間や1ヶ月に一度など頻度を決め、業務の進捗状況の確認や、困っていること、不安に感じていることなどをヒアリングします。
この際、改善点だけでなく、できていることや貢献してくれていることへの感謝を伝えるポジティブなフィードバックも重要です。
良好なコミュニケーションは、問題の早期発見と解決に役立ちます。

日頃から派遣元の担当者と情報共有し連携を密にする

トラブルが発生してから連絡するのではなく、日頃から派遣元の担当者と良好な関係を築き、情報共有を行っておくことが大切です。
派遣社員の勤務状況や職場での様子などを定期的に報告し、良い点も課題も共有します。
これにより、問題の兆候が見られた際に早期に相談でき、派遣元と協力して迅速に対応することが可能になります。

派遣元は派遣社員をサポートするプロであり、良きパートナーとして連携体制を構築します。

派遣社員の問題行動に関するよくある質問

派遣社員の問題行動への対応では、具体的な状況において「これは法的に許されるのか」「どう伝えるのがベストか」といった疑問が生じがちです。
特に、契約の途中解除や派遣元への伝え方など、デリケートな問題については判断に迷うことが多いでしょう。
ここでは、派遣先の管理職や人事担当者から寄せられることの多い質問に回答し、労働者とのトラブルを避けるためのポイントを解説します。

問題行動を繰り返す派遣社員に「明日から来なくていい」と直接伝えられますか?

直接伝えることはできません。
派遣先には派遣労働者を解雇する権限がなく、そのような発言は不当解雇とみなされる危険性があります。
契約に関する決定は、必ず雇用主である派遣元企業を通じて行う必要があります。

まずは派遣元の担当者に事実を報告し、今後の対応を協議してください。

契約期間の途中でも、問題のある派遣社員を交代してもらうことは可能ですか?

派遣契約の期間中であっても、派遣社員の交代を求めることは可能です。ただし、派遣先の一方的な都合で即座に交代させることは難しく、派遣元との契約内容や法的なルールに基づいた正当な理由が求められます。

具体的には、度重なる遅刻や欠勤といった勤怠不良、業務上の指示に従わないといった契約違反に準ずる行為が該当します。こうした問題行動に対し、派遣先が適切な指導を行い、それでも改善が見られない場合に初めて交代の相談が現実味を帯びます。

交代を要請する際は、派遣元企業との労働者派遣契約の定めに従い、客観的な事実を提示して協議を進める必要があります。独断で判断せず、まずは派遣元の担当者へ状況を正確に伝え、解決策を模索することが重要です。

派遣会社に派遣社員の問題行動を伝える際、どんな点に注意すればよいですか?

感情的な不満ではなく、客観的な事実を具体的かつ冷静に伝える点が重要です。
「いつ、誰が、何をしたか」という5W1Hを明確にした記録を基に報告しましょう。
また、派遣先としてどのような指導を行ったか、それに対して本人がどう反応したかを併せて伝えると、派遣会社が状況を正確に把握し、適切な対応を取りやすくなります。

まとめ

派遣社員の問題行動に対応する際は、派遣先が単独で判断・行動するのではなく、必ず派遣元企業と連携することが基本原則です。
まず現場で注意・指導を行い、その内容を客観的に記録すること、そしてその記録に基づいて派遣元へ相談し、対応を協議するという手順が、法的リスクを回避し円満な解決に至るための正しい道筋です。
日頃から派遣元との情報共有を密にし、トラブルを未然に防ぐ体制を構築することも、安定した職場環境の維持に不可欠です。

お電話・メールで
ご相談お待ちしております。

 

この記事の監修者:樋口陽亮弁護士


弁護士 樋口陽亮 (ひぐち ようすけ)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 樋口陽亮 (ひぐち ようすけ)

【プロフィール】

出身地:
東京都。
出身大学:
慶應義塾大学法科大学院修了。

2016年弁護士登録(第一東京弁護士会)。経営法曹会議会員。
企業の人事労務関係を専門分野とし、個々の企業に合わせ専門的かつ実務に即したアドバイスを提供する。これまで解雇訴訟やハラスメント訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件など、多数の労働事件について使用者側の代理人弁護士として幅広く対応。人事労務担当者・社会保険労務士向けの研修会やセミナー等も開催する。

当事務所では労働問題に役立つ情報を発信しています。

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