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近年、職場においてLINEやチャットアプリが日常的に活用されています。
業務連絡から雑談まで幅広く利用されるこれらのツールは、職場環境の円滑化に役立つ一方、セクハラ問題の発覚時に「証拠」として注目されることが増えています。
特に「LINEでのやりとりが親密であれば問題ない」「相手が親しみを示していたのでセクハラには該当しない」という主張が裁判でどのように扱われるかは、重要な論点です。
本稿では、大阪地裁令和6年8月23日判決(A事件)を題材に、この問題を考えてみます。
原告は、給与計算や小口現金管理、人事手続、業務監査、補助金申請などの事務を担当していました。また、セクハラ相談窓口の担当者も務めていました。
Dさんは週20時間以内の勤務で、週に4~5日、1日4時間程度勤務していました。
2022年11月15日、原告は退職を希望するパート従業員からメッセージを受けてショックを受けた後、Dさんの肩に手を置き、「俺、もうあかんわ」と発言しました。この行為は3~5秒間続いたと認められます。
2022年12月13日、Dさんが武道に興味を示したことをきっかけに、原告がDさんに合気道を紹介し、技の実演や動画視聴を行いました。この際、原告はDさんの肩に触れるなどの接触を行いました。
原告とDさんは、2022年11月1日から2023年1月24日まで、以下のようなやり取りをしていました。
2022年12月2日
D:「優しさがすてきですー ドキドキしますねっ」
原告:「会議で見たと思うけど、俺、敵とみなしたら容赦ないから みんなそれ知ってるから、出たかと思われても仕方ないと思ってるよ。パワハラのことね。」
D:「えー!全然そんなことないのに わたしが弁護します」
D:「いっぱいご迷惑おかけすると思いますが、仕事だけは真面目にAさんとながーく頑張っていきたいと思ってますのでどうぞ宜しくお願いします」
2022年12月5日
原告:「また、HとJ、行きましょうね」
D:「今日もごちそうさまです ありがとうございます HとJ楽しみにしてます」
2022年12月15日
原告:「今日もいろいろあったんで、早く帰れたら、また話しましょう。」
D:「お話出来るのを楽しみに帰り待ってます」
2022年12月29日
D:「今年はA社にお世話になり、Aさんに出会い、良くしてもらって良い年でした 来年もよろしくお願いいたします。」
2023年1月下旬、Dさんはパート従業員から「原告に何かされていないか」と尋ねられた際に、原告からセクハラを受けたと話しました。
この内容は、上司を通じて会社代表者に報告されました。
2023年1月31日に行われた事情聴取では、原告はDさんへの抱きつきを否定しましたが、肩に触れたことを認め、「Dさんが嫌であったなら謝罪する必要がある」と発言しました。
同日、会社は原告に退職勧奨を実施し、自宅待機を命じました。
原告は弁護士を通じて、解雇や退職勧奨が重すぎると抗議し、退職を前提とする合意書に応じない旨を伝えました。
2023年2月24日、会社は原告に対して解雇の意思表示を行いました。
裁判所は原告の身体的接触はセクハラに該当するが解雇は無効であると判断しました。
原告が部下であるDさんに対し、肩に手を置く、合気道の実演として身体に触れるといった行為は、就業規則が禁止する性的言動に該当し、職場環境を害する行為と判断しました。
原告とDさんのLINEのやりとりから、表面的には良好な関係がうかがえます。
しかし、Dさんが入社間もない従業員であり、原告が上司であったこと、Dさんが家庭を持つ既婚者であったことを考慮すると、Dさんが行為に同意していたとは認められないと判断しました。
「なお、原告のDに対する上記各行為の際、Dが原告に対して不快感や拒絶の意思を明らかに示したことはうかがわれない。
また、上記各行為の前後を通じて、原告とDは、LINEによるメッセージのやり取りをしており、その内容は両者の関係が良好であることをうかがわせるものである(認定事実(6))。
しかし、Dは被告に入社して間もない時期であり、原告が上司であったこと、Dは婚姻しており夫と子2人と同居していたこと(前提事実(1)ウ)などに照らせば、これらの事情をもって、原告の上記各行為を正当化することはできないし、Dが上記各行為に真摯に同意していたともいえない。」
原告は事情聴取で身体的接触を認め反省の態度を示しており、過去に懲戒処分や同様の指導を受けた経歴もありません。
また、原告の行為は軽視できないものの、社会通念上解雇を正当化するほどの重大性はないと判断しました。
職場において、他者の身体に触れる行為は、現在の社会通念に照らし合わせるとセクハラに該当する可能性が高いとされています。
セクハラに該当するか否かは、行為者や受け手の主観ではなく、社会的な常識や一般的な判断基準によって判断されます。
そのため、肩や背中に触れる、頭をなでる、腕や手を握る、体を寄せるといった行為は、セクハラに該当する可能性が高いと思います。
原告の行為は1回だけではなく、Dさんに対して繰り返し身体的接触が行われています。
このような行為は、たとえ意図的でなくとも、受け手に不快感や困惑を与え、職場環境を悪化させセクハラに該当します。
特に、原告がDさんの上司であり、Dさんが入社間もない部下であったことから、Dさんが拒絶しにくい状況にあったと考えられます。
本件では、原告とDさんのLINEのやりとりにおいて、Dさんが好意的で親密な態度を示していたことが確認されています。
しかし、これらのやりとりが存在していたとしても、身体的接触を正当化する理由にはなりません。
職場における身体的接触は、その必要性や妥当性が厳しく問われるべきものであり、LINEでのやりとりによる「良好な関係性」は、相手が身体的接触を容認していたことを証明するものではありません。
また、Dさんが原告との上下関係の中で、LINEでの親密な態度を示した可能性も排除できません。そのため、LINEの内容をもって原告の行為を正当化することはできないといえます。
セクハラ事案において、何らかの理由で身体を触っても「自分だけは許される」と考えている方がいますが、そのような事は皆無に近く、普通に嫌がられています。
実際には、部下や従業員が上司としての立場に配慮して優しく接しているだけであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
このような勘違いがトラブルを招く原因となるため、立場に甘えず相手の気持ちや社会的常識を尊重する姿勢が求められます。
この記事の監修者:向井蘭弁護士

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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