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今回は、定年後再雇用における更新の期待の内容について判断した裁判例(東光高岳事件・東京地裁令和6年4月25日判決・労経速2554号)をご紹介します。
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目次
「定年後再雇用の更新時に条件変更することは不利益変更になりますか?労働者が提案に同意しない場合は雇止めになりますか?」という質問をよくいただきます。
定年後再雇用も有期契約であり、契約更新の際に使用者が理由を示して労働条件を変更して提案すること自体は可能であり、厳密には不利益変更の問題ではありません(不利益変更は契約期間の途中に、同意なく使用者が一方的に契約内容を変更することです)。
高年法も定年後再雇用の初回条件と「同一条件」を65歳まで続けることを義務付けていません。
しかし労契法19条の雇止め法理の適用はあるので、違法な雇止めの場合「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件」で当該申込みを承諾したものとみなされてしまいます。
(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 (略)
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
そもそも労契法19条2号の雇止め法理が適用されるのは、「更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」場合です。では、更新の期待は何についての期待でしょうか?
①直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することの期待?
このように考えれば、例えば定年後再雇用の初回の契約しかない場合、1回も更新されておらず、直近と同じ条件で更新された実績はないから、そもそも同じ条件で更新されることへの期待など生じていないと言いやすくなるように思います。
②労働条件変更はあり得るものの、何らかの労働契約が締結されることの期待?
高年法の趣旨から65歳までの更新期待はありそうなので、あとは使用者による雇止めの決断が、客観的に合理的で社会通念上相当かどうかで判断されることになるように思います。
この点、東光高岳事件(東京地裁令和6年4月25日判決)は、労契法19条2号の「更新」は、直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することと解釈しています。
そのうえで、定年後再雇用としては1回目であって、同じ条件で労働契約を更新したことはなかったから、更新回数や雇用通算期間に基づいて、最初の契約と同一の労働条件で更新されることが期待される状況ではなかったと判断しています。
そして継続雇用規程において労働条件は再雇用者の希望を聴取した上で諸事情を勘案して個別に会社が契約の都度決定することとなっていたこと、定年後再雇用1回目の労働契約の賃金よりも50%以上低下した条件で次の契約を締結した者もいたことなど、1回目の労働契約と同じ労働条件による労働契約締結は保障されていなかったと認定しています。
定年後再雇用が2回、3回と更新されている場合、直近の内容と同じ契約内容で更新される期待が高まると思いますが、初回から2回目の場合のように更新実績がない場合、他の定年後再雇用者の労働条件が1回目と2回目で変わっている場合、担当する業務内容等が大きく変更するなどの事情がある場合には、それらを説明して認識してもらうことで、直近の契約と同じという期待を生じさせないことができると考えます。
例えば、定年後再雇用の初回の契約を締結する際には「これは初回の契約内容であり、本人の健康状態、業務量や業務内容の変化、会社の経営状況等を踏まえて変更があり得、双方が合意した場合に契約が更新される」「今回の労働条件は、部長職の引き継ぎ業務を行うための1年限定の待遇であり、2年目以降は引き継ぎ業務がなくなるため待遇も含めて減額変更になることについて説明を受けた」等を雇用契約書の備考欄に入れておくなどして、当然に直近の契約と同じ内容で更新されるという期待を生じさせないような対策をしておくことが重要です。
この記事の監修者:岸田 鑑彦弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 岸田鑑彦(きしだ あきひこ)
【プロフィール】
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。平成21年弁護士登録。訴訟、労働審判、労働委員会等あらゆる労働事件の使用者側の代理を務めるとともに、労働組合対応として数多くの団体交渉に立ち会う。企業人事担当者向け、社会保険労務士向けの研修講師を多数務めるほか、「ビジネスガイド」(日本法令)、「先見労務管理」(労働調査会)、労働新聞社など数多くの労働関連紙誌に寄稿。
【著書】
「労務トラブルの初動対応と解決のテクニック」(日本法令)
「事例で学ぶパワハラ防止・対応の実務解説とQ&A」(共著)(労働新聞社)
「労働時間・休日・休暇 (実務Q&Aシリーズ) 」(共著)(労務行政)
【Podcast】岸田鑑彦の『間違えないで!労務トラブル最初の一手』
【YouTube】弁護士岸田とストーリーエディター栃尾の『人馬一体』
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