日本全国に対応しております!
受付時間:平日9:00~17:00
日本全国に対応しております!
私のニュースレター(令和6年10月発行130号)で取り上げた定年後再雇用における更新の期待の内容について判断した東光高岳事件(東京地裁令和6年4月25日判決・労経速2554号)の高裁判決(東京高裁令和6年10月17日・労経速2571号)をご紹介します。
前提の説明があった方が分かりやすいと思い、以前のニュースレターの内容も引用しています。
お電話・メールで
ご相談お待ちしております。
受付時間:平日9:00~17:00
受付時間:平日9:00~17:00
日本全国に対応しております!
目次
「定年後再雇用の更新時に条件変更することは不利益変更になりますか?労働者が提案に同意しない場合は雇止めになりますか?」という質問をよくいただきます。
定年後再雇用も有期契約であり、契約更新の際に使用者が理由を示して労働条件を変更して提案すること自体は可能であり、厳密には不利益変更の問題ではありません(不利益変更は契約期間の途中に、同意なく使用者が一方的に契約内容を変更することです)。高年法も定年後再雇用の初回条件と「同一条件」を65歳まで続けることを義務付けていません。
しかし労契法19条の雇止め法理の適用はあるので、違法な雇止めの場合「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件」で当該申込みを承諾したものとみなされてしまいます。
(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
そもそも労契法19条2号の雇止め法理が適用されるのは、「更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」場合です。では、更新の期待は何についての期待でしょうか?
① 直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することの期待?
このように考えれば、例えば定年後再雇用の初回の契約しかない場合、1回も更新されておらず、直近と同じ条件で更新された実績はないから、そもそも同じ条件で更新されることへの期待など生じていないと言いやすくなるように思います。
② 労働条件変更はあり得るものの、何らかの労働契約が締結されることの期待?
高年法の趣旨から65歳までの更新期待はありそうなので、あとは使用者による雇止めの決断が、客観的に合理的で社会通念上相当かどうかで判断されることになるように思います。
地裁判決は、労契法19条2号の「更新」は、直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することと解釈しています。上記の考え方でいくと①になります。
そのうえで、定年後再雇用としては1回目であって、同じ条件で労働契約を更新したことはなかったから、更新回数や雇用通算期間に基づいて、最初の契約と同一の労働条件で更新されることが期待される状況ではなかったと判断しています。
そして継続雇用規程において労働条件は再雇用者の希望を聴取した上で諸事情を勘案して個別に会社が契約の都度決定することとなっていたこと、定年後再雇用1回目の労働契約の賃金よりも50%以上低下した条件で次の契約を締結した者もいたことなど、1回目の労働契約と同じ労働条件による労働契約締結は保障されていなかったと認定しています。
これに対して高裁判決は、更新の期待について、従前の労働契約と同一の労働条件で当該有期労働契約が更新されるものと期待することに限定されず、従前の労働契約から労働条件が変更された上で当該有期労働契約が更新されるものと期待することも含まれると解釈しました。
上記の考え方でいくと②になります。そして本件では更新の期待があると判断したうえで、雇止めの有効性が判断されました。
経営難に陥った会社を吸収合併したという経緯、定年後再雇用者について従前と同じ労働条件で再雇用をすべき特段の必要性は認めがたく、むしろ他の定年後再雇用者約120名に不公平感を抱かせ、その士気を損ね、意欲を低下させるおそれがあり他の定年後再雇用者と同一の労働条件とする必要性が高いことから、会社が提案した条件(4つの提案)は従前の労働条件と比較していずれも低下するものであったものの、提案内容については合理性があったと判断しました。そのため従前と同一の労働条件で更新されると期待することについて合理的理由が存在したとは認めがたく、また会社が提案した労働条件については合理性があるとして、雇止めを有効と判断しています。
定年後再雇用者については65歳まで更新の期待が生じやすいため、更新されるとしても直近の契約と全く同じ内容で更新されるという期待を生じさせないことのほか(更新時に労働条件の見直しがなされることについての周知等)、更新のタイミングで契約内容を変更して提案する場合には、その変更の必要性や不利益の程度を考慮して納得感のある提案をすることが求められます。
この記事の監修者:岸田 鑑彦弁護士

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 岸田鑑彦(きしだ あきひこ)
【プロフィール】
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。平成21年弁護士登録。訴訟、労働審判、労働委員会等あらゆる労働事件の使用者側の代理を務めるとともに、労働組合対応として数多くの団体交渉に立ち会う。企業人事担当者向け、社会保険労務士向けの研修講師を多数務めるほか、「ビジネスガイド」(日本法令)、「先見労務管理」(労働調査会)、労働新聞社など数多くの労働関連紙誌に寄稿。
【著書】
「労務トラブルの初動対応と解決のテクニック」(日本法令)
「事例で学ぶパワハラ防止・対応の実務解説とQ&A」(共著)(労働新聞社)
「労働時間・休日・休暇 (実務Q&Aシリーズ) 」(共著)(労務行政)
【Podcast】岸田鑑彦の『間違えないで!労務トラブル最初の一手』
【YouTube】弁護士岸田とストーリーエディター栃尾の『人馬一体』
その他の関連記事
キーワードから記事を探す
当事務所は会社側の労務問題について、執筆活動、Podcast、YouTubeやニュースレターなど積極的に情報発信しております。
執筆のご依頼や執筆一覧は執筆についてをご覧ください。