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法人・事業主様専用目次
| 業種 | 医療機関(整形外科クリニック) | |
| 従業員数 | 100名未満 | |
| 解決方法 | 和解(訴訟外の交渉) | |
| 結果 | 請求額 | 解決金 |
| 合計約828万円 | 400万円 | |
在職中の看護師が代理人弁護士をつけ、同僚の男性から約2年間にわたりセクシャルハラスメント・パワーハラスメントを受けたこと、及び院内で発生した身体接触事件(暴行)について、クリニックが何らの対処もしなかったことにより適応障害を発症したとして、雇用契約上の安全配慮義務違反及び使用者責任に基づき、慰謝料を含む損害賠償、退職金相当額等の支払いを求められた事案のご相談でした。
相手方は、①法人がこれまで対処してこなかったことを謝罪する面談の録音、②行為者本人がハラスメントを認める発言の録音、③目撃者の証言の録音の存在を主張し、要求に応じない場合には法的手続をとる予定である旨を予告していました。
なお、本件は当初別の法律事務所に対応を委任されていましたが、対応への不安から、代理人を交代したいとのことで当事務所にご相談いただいた案件でした。
受任後、法人から経緯に関する資料の提供を受け、相手方が存在を主張する録音データの開示も求めたうえで事実関係を精査しました。
そのうえで、概ね以下の反論を行いました。
第一に、安全配慮義務違反の不存在です。法人は被害申告後速やかに外部弁護士による事実調査を実施し、行為者に出勤停止処分を実施済みであること、復職に際して両者の接触を避ける措置を講じ、防犯カメラも相手方の要求以前に法人自らの判断で設置していたことを、時系列に沿って具体的に主張しました。
第二に、ハラスメント該当性の否定です。身体接触はスタッフが頻繁に往来する狭隘な通路等で生じたもので性的な言動(セクハラ)には該当しないこと、問題とされる発言も業務上の注意指導の側面が強く、職制上はむしろ請求者の方が上位であり優越的な関係を背景とした言動(パワハラ)とは認められないことを指摘しました。また、録音上の管理職らの謝罪発言は感情的になった請求者を鎮静化させるための対応にすぎず、法的責任を自認したものではないと反論しました。
第三に、退職金請求については、就業規則上の支給要件を満たさず、請求額にも算定根拠がないことを指摘しました。
さらに、書面による反論と並行して、療養期間経過後も欠勤を続ける請求者に最新の診断書の提出を求めたうえで、就業規則に基づき正式に休職命令を発令し、休職期間満了までに治癒しなければ退職となる枠組みを明確にしました。そのうえで、退職を前提とする解決金の支払いを提案し、金額交渉を進めました。
法人側は、上記の反論により安全配慮義務違反が成立しないことを主張しつつ、まず解決金200万円での退職を提案し、その後の交渉を経て、最終的に労災保険の支給申請を留保することを条件として、解決金400万円の支払いにより退職合意が成立しました。
相手方の請求は損害賠償・退職金相当額等を合わせて合計約828万円にのぼっていたため、請求額から約428万円(約半額)の減額に成功したことになります。
本件の特徴は、①相手方が録音データの存在を主張していたこと、②労災申請の予告がなされていたことの2点にあります。
ハラスメント事案では、被害を訴える労働者側が面談等のやり取りを録音しているケースが近年非常に増えています。録音の中に、管理職や経営者による謝罪・責任を認めるかのような発言が含まれている場合、訴訟に移行した際に安全配慮義務違反を基礎づける証拠として用いられるリスクがあります。本件でも、録音データの存在を前提に、訴訟に至った場合の見通しを冷静に分析したうえで交渉方針を立てることが重要でした。
また、精神疾患を理由とする労災申請が予告されている事案では、仮に労災認定がなされると、療養期間中の解雇制限(労働基準法第19条)により雇用関係の解消が長期間困難となるうえ、休業補償等をめぐって紛争が長期化・高額化するリスクがあります。そのため、労災申請前の段階で、労災申請の留保を条件に退職合意により紛争を一回的に解決することには、使用者側にとって大きなメリットがあります。
他方で、使用者側として反論すべき点は的確に反論することも重要です。本件では、法人が被害申告後に外部弁護士による調査、懲戒処分、接触回避のための配慮、防犯カメラの設置等の措置を実際に講じていたことを丁寧に主張立証し、「何らの対処もしなかった」という相手方の主張の前提を崩したことが、減額交渉を有利に進めるうえで奏功しました。
加えて、交渉と並行して労務管理上の手続を適切に進めたことも本件のポイントです。休職中の従業員との金銭交渉は、雇用関係の終期が見えないまま長期化しがちですが、本件では診断書の提出を求めたうえで就業規則に基づく休職命令を正式に発令し、休職期間満了時の取扱いを明確にしたことで、交渉に自然な期限が生まれ、早期の退職合意につながりました。ハラスメント紛争においては、書面上の反論だけでなく、就業規則に沿った手続を粛々と履践しておくことが、交渉を前に進める推進力となります。
ハラスメントの申告を受けた際に、使用者として調査・処分・再発防止策等の対応を適切に実施し、その記録を残しておくことが、後日の紛争において極めて重要になることを示す事案といえます。
使用者側の労務トラブルに取り組んで50年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題従業員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
今回ご紹介した企業様からは裁判終了後も当事務所との顧問契約を継続していただいており、賃金制度設計の見直しや日頃の労務管理についてのアドバイスをさせていただいております。労働紛争は目の前の紛争事件の解決のみではなく、紛争が解決した後に同じような問題が起こらないようにフォローすることも重要になります。
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