団体交渉、労働組合対策、使用者側の労務問題を弁護士が解決!団体交渉、労働組合対策なら杜若経営法律事務所へ

退職したドライバーから約1,000万円の未払い残業代を請求されたものの、訴訟に至ることなく、交渉により約350万円(約7割減額)で早期解決した事例

業種 運送業
従業員数 50名未満
ご相談の種類 残業代請求・未払い賃金
解決方法 交渉(合意書の締結による示談)
結果 請求額 解決金
約1,000万円 約350万円(請求額の約7割を減額)
解決までの期間 ご依頼から約1か月半

 

1,ご相談の経緯

退職したトラックドライバーの代理人弁護士から、在職中の未払い割増賃金として約1,000万円を求める書面が会社に届きました。会社は当初、別の法律事務所に対応を委ねていましたが、請求書の到達から相応の時間が経過し、賃金請求権の消滅時効の完成も迫っていました。相手方代理人は、交渉が決裂すれば訴訟提起に踏み切ることも想定される事務所です。

そこで、使用者側の労働事件を専門に取り扱う当事務所に、あらためてご依頼をいただきました。

 

2,事案の概要

会社は、長距離運行に従事した場合に支給する手当(以下「本件手当」といいます。)を、時間外労働に対する割増賃金の支払いとして取り扱っていました。入社時の面接で「残業代に相当するもの」と説明したうえで支給してきたという認識でしたが、その裏づけとなる書面は十分ではありませんでした。

これに対し相手方は、①本件手当は割増賃金の支払いとしては無効であり基礎賃金に算入されるべきである、②運行記録上の出庫から帰庫までの時間は、休憩時間を除きほぼすべてが労働時間にあたる、と主張しました。この前提で計算された請求額が、約1,000万円でした。

 

3,本件の争点

 

争点1 本件手当が割増賃金の支払いとして有効といえるか

いわゆる固定残業代(定額残業代)が有効と認められるためには、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分とを判別できること(明確区分性)に加え、当該手当が時間外労働等の対価として支払われるものといえること(対価性)が必要とされています。
本件手当は運行実績に応じて額が変動する性質のもので、就業規則や雇入通知書の記載も明瞭とはいえませんでした。主張としては維持できるものの、訴訟で有効性が認められるかについては慎重な見通しを立てざるを得ない状況でした。

 

争点2 労働時間の認定(休憩時間・荷積み荷卸し時間の評価)

相手方は、出庫から帰庫までの時間から明細表上の休憩時間を控除した時間を、そのまま労働時間として計算していました。
もっとも、いわゆる手待ち時間、すなわち現実に作業に従事していなくとも、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならず労働からの解放が保障されていない時間は、労働時間と評価されます。「運転していない時間」を一律に休憩時間と主張しても、裁判所には受け入れられません。
そこで本件では、運転時間以外の時間のうち、荷積み・荷卸しに実際に要していた時間を具体的に特定し、それを超える部分を休憩時間として評価すべきである、という組み立てを検討しました。

 

4,当事務所の対応

(1) 資料の精査と、会社の認識に基づく労働時間の再構成

 

就業規則、雇入通知書、賃金台帳、労働実績明細表、運行記録計のデータを精査したうえで、相手方から提供を受けた残業代計算ソフトのデータをそのまま用いるのではなく、日々の運行ごとの休憩の実態を会社に入力していただきました。これにより、「会社の認識に基づく労働時間」を相手方と同じ計算基盤の上で示すことが可能になりました。

 

(2) 複数のシナリオに基づく試算

残業代請求事件では、争点の判断がどちらに転ぶかで認容額が大きく変動します。そこで、本件手当が有効とされる場合/無効とされ歩合給として算入される場合/無効とされ固定給として算入される場合と、休憩時間の認定に関する双方の主張とを組み合わせ、それぞれの未払額を試算しました。訴訟になった場合のリスクの上限と下限を、依頼者と共有するためです。

 

(3) 反論と譲歩をセットにした提案

①本件手当が割増賃金の支払いとして有効であること、②休憩時間は明細表のとおり取得され、荷積み・荷卸しに要する時間も限定的であったことを主軸とする反論書面を送付しました。ただし、反論を尽くすだけでは交渉は進みません。訴訟に移行すれば解決までに1年以上を要することを踏まえ、同じ書面で早期解決を前提とした解決金(約200万円)を併せて提案しました。

 

提案額の設定にあたっては、相手方が訴訟提起も辞さない対応を取り得ることを踏まえ、「低すぎて交渉のテーブルが壊れる水準」を避けることを重視しました。交渉による解決を目指す場合、最初の提案額が、その後の交渉全体の枠組みを決めます。

 

(4) 根拠を示した再提案

相手方からは、双方が譲歩する形での解決として約500万円という対案が示されました。そこで当方は、休憩時間については会社に有利な整理を維持しつつ、本件手当については訴訟で有効性が認められない可能性を織り込み、歩合給として基礎賃金に算入して計算し直しました。その結果である約340万円に若干の上乗せをした約350万円を、計算過程とともに提示しています。
単に金額を伝えるのではなく、どのような前提に立てばその金額になるのかを説明したことが、相手方代理人の理解を得るうえで有効に機能しました。

 

5,解決結果

 

6,弁護士のコメント

  1. 固定残業代は、「主張できるか」と「認められるか」を分けて考える必要があります。有効性が否定されるリスクを現実的に評価し、主張は維持しつつ無効とされた場合の金額も把握しておくことが、交渉の主導権を握るうえで不可欠です。
  2. 反論だけでは事件は終わりません。法的な反論を尽くすことと、どの水準で解決するのが会社にとって合理的かを見極めることは別の作業であり、両者をセットで提示して初めて交渉が動きます。
  3. 労働時間の主張は、「争える部分」を数値化して初めて説得力を持ちます。手待ち時間が労働時間にあたる以上、「運転していない時間はすべて休憩」という主張は通用しません。実際の作業時間を特定し、それを超える部分について休憩時間としての評価を求める組み立てが有効です。
  4. 提示金額には根拠を添えることが重要です。相手方も代理人が就いている以上、依頼者を説得する材料を必要としています。計算の前提を明示した提案は、相手方代理人が本人を説得する材料にもなります。

 

7,同種のご相談をお考えの企業様へ

運送業における残業代請求は、固定残業代の有効性と労働時間の認定という、専門的な判断を要する論点が重なり合います。請求額が高額になりやすい一方で、資料の精査と主張の組み立てにより大幅な減額が実現できる分野でもあります。請求書面が届いた場合には、対応方針を決める前の段階で、使用者側の労働事件を専門とする弁護士にご相談ください。

 

8、労働問題には専門的な知識が必要です。まずは弁護士にご相談ください。

使用者側の労務トラブルに取り組んで50年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題従業員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。

今回ご紹介した企業様からは裁判終了後も当事務所との顧問契約を継続していただいており、賃金制度設計の見直しや日頃の労務管理についてのアドバイスをさせていただいております。労働紛争は目の前の紛争事件の解決のみではなく、紛争が解決した後に同じような問題が起こらないようにフォローすることも重要になります。

まずはお気軽にお電話やメールでご相談ください。

 

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9、当事務所では労働問題に役立つ情報を発信しています。

当事務所は会社側の労務問題について、執筆活動、Podcast、YouTubeやニュースレターなど積極的に情報発信しております。
執筆のご依頼や執筆一覧は執筆についてをご覧ください。

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この記事を執筆した弁護士

佐藤浩樹 (さとう ひろき)

杜若経営法律事務所 弁護士
佐藤浩樹弁護士 (さとう ひろき)

弁護士プロフィール:
弁護士。

群馬県出身。慶應義塾大学法科大学院修了。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。経営法曹会議会員。 企業の人事労務関係を専門分野とし、個々の企業に合わせ専門的かつ実務に即したアドバイスを提供する。これまで解雇訴訟や残業代請求訴訟、団体交渉対応など、労働事件について使用者側の代理人弁護士として幅広く対応。