セクシャルハラスメントとは?法律上の定義、判断基準と具体例を解説

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セクシャルハラスメント(セクハラ)は、職場における重大な人権侵害の一つです。

この問題への理解を深めるためには、法律上の定義や客観的な判断基準を正確に把握することが不可欠です。

本記事では、セクハラの定義から具体的な言動の例、そして企業に課せられた防止義務までを詳しく解説します。

どのような言動がセクハラに該当するのか、その基準を知ることで、誰もが働きやすい職場環境の実現を目指します。

セクシャルハラスメントの対応と防止策については「[弁護士が教えるセクハラ対応と防止](https://www.labor-management.net/laborcolumn/055/)」で詳しく紹介しています。

目次

セクシャルハラスメントの基本的な定義

セクシャルハラスメントとは、一般的に「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを理由として労働条件について不利益を受けたり、職場環境が害されたりすること」と定義されます。

この定義は、男女雇用機会均等法に基づくものであり、単なる不快な言動にとどまらず、働く権利を脅かす問題として法的に扱われます。

重要なのは、加害者の意図ではなく、受け手がどう感じたかが重視される点です。

法律で定められた「職場におけるセクハラ」とは?

男女雇用機会均等法第11条では、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と規定されています。

この法律に基づき、事業主にはセクハラを防止するための措置を講じることが義務付けられています。

これには、方針の明確化や相談体制の整備などが含まれ、違反した場合には行政指導の対象となります。

対象となる「職場」の範囲はどこまでか

法律上の「職場」とは、従業員が通常業務を行うオフィスや工場だけを指すわけではありません。

業務を遂行する場所であれば、すべてが職場と見なされる可能性があります。

例えば、出張先や移動中の車内、接待の場である飲食店、さらには社員旅行や懇親会といった実質的に業務の延長線上にある場所も含まれます。

このように、職場についての範囲は広く解釈されるため、勤務時間外や社外での言動にも注意が必要です。

飲み会帰りのタクシー車内でのセクハラ事例については「[飲み会帰りのタクシー車内でのセクハラと使用者責任](https://www.labor-management.net/laborcolumn/111/)」で詳しく紹介しています。

対象となる「労働者」に契約社員やパートも含まれるか

セクハラ防止対策の対象となる労働者には、正規雇用の従業員だけでなく、契約社員、パートタイム労働者、アルバイト、派遣社員など、事業主が雇用するすべての労働者が含まれます。

雇用形態によって保護の内容に差はありません。

また、求職者に対するセクハラも問題となる場合があります。

企業は、自社に所属する多様な立場の労働者全員を守る義務を負っており、すべての人が安心して働ける環境を整備する責任があります。

どのような言動が「性的な言動」と見なされるか

「性的な言動」とは、性的な内容の発言や性的な行動を幅広く指します。

具体的には、性的な事実関係を尋ねる、性的な内容の噂を流す、食事やデートにしつこく誘うといった発言が含まれます。

また、身体へ不必要に接触する、わいせつな図画を配布・掲示するなどの行動も該当します。

これらの言動は、相手の尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させる原因となります。

直接的な言葉だけでなく、視線や態度によって相手に不快感を与える場合も含まれることがあります。

セクハラの判断基準|どこからがアウトになるのか

セクハラの判断は、個人の主観が大きく関わるため、その境界線の特定が難しい問題です。
しかし、法律や判例では、セクハラに該当するかどうかを判断するための客観的な基準が示されています。

重要なのは、加害者にセクハラの意図があったかどうかではなく、その言動が相手にどのような影響を与えたかです。
ここでは、セクハラの成否を判断する上で考慮される主要な基準について解説します。
セクハラの評価の難しさについては「[セクハラの評価は裁判官でも難しい?](https://www.labor-management.net/laborcolumn/セクハラの評価は裁判官でも難しい?/)」で詳しく紹介しています。

客観性が重要:「平均的な労働者」の感じ方が基準になる

被害者の主観が重視される一方で、その言動がセクハラに該当するかを判断する際には、客観的な基準も用いられます。

具体的には、「平均的な労働者の感じ方」を基準として、同様の状況に置かれた場合に社会一般の労働者が不快に感じると考えられるかどうかが考慮されます。

この客観的基準は、個人の過剰な反応と法的に問題となるハラスメントを区別するための重要な課題です。

被害者の主観とこの客観的基準を総合的に見て、セクハラかどうかが判断されます。

セクハラの種類と具体的な言動例

セクシャルハラスメントは、その態様によって主に「対価型」と「環境型」の二つの種類に分類されます。

対価型は、労働者の意に反する性的な言動への対応によって、解雇や降格などの不利益を与えるタイプです。

一方、環境型は、性的な言動によって職場環境が不快なものとなり、労働者の能力発揮に重大な悪影響が生じるタイプを指します。

ここでは、それぞれの種類について具体的な例を挙げて解説します。

【対価型セクハラ】要求を拒否すると不利益が生じるケース

対価型セクハラは、職場内の地位や権限を利用して行われる典型的な類型です。

具体的には、労働者が上司などからの性的な要求や誘いを拒否したことを理由に、解雇、降格、減給、不利益な配置転換などの処遇を受けるケースが該当します。

逆に、要求に応じたことへの見返りとして利益を与えることも含まれます。

この類型は、労働者の就労上の権利を直接的に侵害する悪質な行為と位置付けられています。

対価型セクハラの具体例:解雇や降格をちらつかせる

対価型セクハラの具体的な事例としては、以下のようなものが挙げられます。

上司が部下に対し、性的関係を要求し、拒否した部下を解雇する。

事業主が労働者に対し、執拗に食事やデートに誘い、断ったことを理由に不利益な配置転換を行う。

昇進の条件として、個人的な関係を迫る。

これらの事例のように、性的な言動と労働条件が直接結びついている点が特徴です。

【環境型セクハラ】不快な言動で職場環境が悪化するケース

環境型セクハラは、労働者の意に反する性的な言動により、職場環境が不快なものとなり、働く上での意欲や能力が阻害される類型です。

この場合、直接的な不利益な取り扱いがなくても、精神的な苦痛によって業務への集中が困難になるなど、就業環境が悪化すれば成立します。

この類型は、一人の言動だけでなく、職場の同僚による言動が繰り返されることで、職場全体が働きにくい環境になるケースも含まれます。

環境型セクハラの具体例:性的な冗談や身体への不必要な接触

環境型セクハラの具体的な事例には、以下のようなものが含まれます。

職場で性的な内容の会話を頻繁に行ったり、性的な冗談を言ったりする。

容姿や身体的特徴について、業務と無関係な発言を繰り返す。

必要なく身体に触れたり、じっと見つめたりする。

わいせつな画像やポスターを職場に掲示する。

これらの事例は、個々の行為は軽微に見えても、繰り返されることで労働者に多大な精神的苦痛を与えます。

同性間や性的指向(SOGI)に関するハラスメントも対象

セクシャルハラスメントは、異性間だけでなく、同性間で行われる言動も対象となります。

また、相手の性的指向や性自認に関連した差別的な言動や嫌がらせも、セクハラに含まれる場合があります。

例えば、本人の望まない形で性的指向を暴露する行為や、「男のくせに」「女らしくしろ」といった性別による役割を押し付ける発言も、相手に苦痛を与えるハラスメントの一例です。

企業に義務付けられているセクハラ防止措置

男女雇用機会均等法では、事業主に対して職場におけるセクハラを防止するための措置を講じることを義務付けています。

企業がセクハラを放置した場合、安全配慮義務違反として法的な責任を問われる可能性があります。

従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業の責務です。

セクハラを防ぐために、企業は具体的な防止策を策定し、実行に移さなければなりません。

セクハラ・パワハラ事案の相談は「[セクハラ・パワハラ事案は弁護士が解決](https://www.labor-management.net/sexual-and-power-harassment/)」で詳しく紹介しています。

セクハラ防止に関する方針を明確にし周知・啓発する

企業はまず、セクハラを行ってはならないという方針を明確に打ち出す必要があります。

その上で、就業規則や服務規律にセクハラに関する規定を盛り込み、加害者には厳正な処分を行う旨を定めます。

そして、社内報、パンフレット、社内ホームページなどを活用して、この方針を全従業員に周知・啓発します。

また、セクハラの内容や背景を理解させるための研修を定期的に実施することも極めて有効な手段です。

相談窓口を設置し、従業員に広く知らせる

セクハラに関する相談窓口をあらかじめ定め、従業員に知らせておくことが義務付けられています。

相談窓口は、人事部などが担当するだけでなく、外部の専門機関に委託する方法もあります。

重要なのは、相談者が安心して利用できる体制を整えることです。

窓口担当者には適切な研修を実施し、プライバシー保護の重要性を徹底させるとともに、相談しやすい雰囲気作りを心がける必要があります。

セクハラ・パワハラ事案の相談については「[セクハラ・パワハラ事案-相談は杜若経営法律事務所](https://www.labor-management.net/laborcolumn/035/)」で詳しく紹介しています。

発生後の迅速かつ適切な事後対応フローを確立する

実際にセクハラの相談が寄せられた際に、迅速かつ適切に対応できる体制を整えておくことが不可欠です。

まず、相談窓口の担当者が相談者と加害者とされる人物の両方から事実関係を客観的に確認します。

事実が確認できた場合は、被害者のケアを行うとともに、就業規則に基づき加害者に対する懲戒処分などの措置を検討・実施します。

さらに、同様の問題が再発しないよう、具体的な再発防止策を講じることも重要です。

相談者のプライバシー保護と不利益な取り扱いの禁止を徹底する

セクハラについて相談したことや、事実関係の確認に協力したことなどを理由として、相談者や協力者が解雇その他の不利益な取り扱いを受けないようにしなければなりません。

その旨を就業規則などに規定し、全従業員に周知・啓発することが求められます。

相談者のプライバシーを保護するための措置を講じることも義務付けられています。

これらの措置が徹底されることで、従業員は安心して相談窓口を利用できます。

セクシャルハラスメントとはに関するよくある質問

ここでは、セクシャルハラスメントについて、多くの人が抱きがちな疑問点について解説します。

加害者の意図や、業務時間外の言動がセクハラと見なされるかなど、判断に迷いやすいケースを取り上げ、それぞれの考え方を簡潔に示します。

加害者に悪気がなくてもセクハラになりますか?

はい、なります。

セクハラの判断では、加害者の意図よりも、その言動を受けた側が不快に感じたかどうかが重視されます。

「冗談だった」「親しみを込めて言った」という言い分は通用しません。

平均的な労働者が不快に感じるような言動であれば、法的に問題となる可能性があります。

取引先や顧客からのセクハラも会社の対応義務の対象ですか?

はい、対象です。

事業主は、自社の従業員が取引先や顧客からセクハラを受けた場合にも、雇用管理上の配慮義務を負います。

被害者からの相談に応じ、事実確認を行うとともに、取引先に対して是正を求めるなどの対応が必要です。

従業員を守るための体制を整えることが求められます。

飲み会など業務時間外の言動はセクハラに含まれますか?

含まれる場合があります。

たとえ業務時間外であっても、職場の人間関係が背景にある飲み会や懇親会は、実質的に職務の延長と見なされるケースがあります。

そのような場での性的な言動は、職場環境を悪化させる原因となるため、セクハラとして法的な問題になる可能性があります。

まとめ

セクシャルハラスメントは、個人の尊厳を傷つけ、職場の生産性を低下させる深刻な問題です。

その定義は法律で定められており、「対価型」と「環境型」の二種類に大別されます。

判断基準としては、加害者の意図よりも受け手の不快感が重視される一方で、「平均的な労働者の感じ方」という客観的な視点も加味されます。

企業にはセクハラを防止する措置を講じる義務があり、相談窓口の設置や事後対応フローの確立が求められます。

お電話・メールで
ご相談お待ちしております。

 

この記事の監修者:樋口陽亮弁護士


弁護士 樋口陽亮 (ひぐち ようすけ)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 樋口陽亮 (ひぐち ようすけ)

【プロフィール】

出身地:
東京都。
出身大学:
慶應義塾大学法科大学院修了。

2016年弁護士登録(第一東京弁護士会)。経営法曹会議会員。
企業の人事労務関係を専門分野とし、個々の企業に合わせ専門的かつ実務に即したアドバイスを提供する。これまで解雇訴訟やハラスメント訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件など、多数の労働事件について使用者側の代理人弁護士として幅広く対応。人事労務担当者・社会保険労務士向けの研修会やセミナー等も開催する。

当事務所では労働問題に役立つ情報を発信しています。

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