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第24回 平成21年12月28日 「懲戒処分」

A社にはB労働組合A社支部がある。組合員資格のある従業員のうち組合員比率は3割である。A社支部組合員の従業員Cが所定労働時間内に会社の構内でビラを配ったことが分かった。A社は懲戒処分を行うことはできるだろうか?懲戒処分を行う場合は、何をどのように検討するべきだろうか?

【いつ、だれが、どこで、何をしたのかを確定する】

まず、いつ、だれが、どこで、何をしたのかを調べなければならない。就業規則違反行為を裏付ける客観的な物的証拠があるのであれば、まずその物的証拠を集めなければならない。例えば、配布した文書などがあれば文書を手に入れるようにする。録音テープや写真があれば、それも手に入れるようにする。

とはいえ、ほとんどの場合は、就業規則違反行為を裏付ける客観的な物的な証拠がない場合がほとんどである。そのような場合は、就業規則違反行為を目撃した従業員などにヒアリングをして、記録を残す必要がある。特に、後々事実の有無が激しく争われるような場合は、かりに就業規則違反行為をメモなどに残していたとしても、「そのメモは後に後付で作成されたものであり、信用性に乏しい」などと争われることが多いものである。そのため、最寄りの公証役場に行き、ヒアリングメモなどに確定日付を押してもらう。確定日付を押してもらえれば、少なくともその確定日付以後に作成されたものではないとの証明がつくので一定程度証拠を保全する意義がある。

【就業規則を確認する】

当然のことであるが、当該行為がどの就業規則に違反するものであるかを確認しなければならない。就業規則は各社各様である。場合によっては、就業規則の懲戒規定や服務規律に当該行為を取り締まる規定がない場合もあるので、慎重に確認しなければならない。また、就業規則に当該行為を取り締まる規定があったとしても、該当規定が1つよりも2つあった方が、万が一のちに就業規則該当性を否定される可能性を減らすことが出来る。

【言い分を聞く機会を与える】

判例上、懲戒処分を行うためには、被懲戒者の言い分を聞かなければならないとされている。言い分を聞く機会を与えない場合は、懲戒処分は無効となる可能性が高くなる。かりに、就業規則に定めが無くとも言い分の機会は与えなければならない。

 

【処分の均衡】

形式的に就業規則違反にあてはまる場合にも、処分の均衡を欠く場合には、権利の濫用であるとして、懲戒処分が無効とされる場合がある。

例えば、ある会社の就業規則に「遅刻はしてはならない」との文言が存在すると仮定する。この会社は、これまで遅刻をしてきた者に対し、懲戒処分を行ってきたことはなかった。このような場合、問題社員が遅刻をしたからといって、すぐに出勤停止などの厳しい処分を科すことは処分の均衡を欠くとして争われる場合がある。特に、労働組合が社内に結成され、急に労務管理を厳しく行おうとする場合は処分の均衡を欠くとして労働組合から抗議を受けることがある。

そうはいっても、遅刻をしている者に対し何の処分を下さないのでは社内秩序を保てない。
このような場合はどのように対応したらよいのだろうか?

まず、通知書を出し、当該従業員の行為は就業規則●条違反に該当するので今後は遅刻しないこと、再度遅刻をした場合は懲戒処分を下すことがあると警告する。また、遅刻については今後厳しく懲戒処分を下すという社内通達文書を掲示し、他の従業員にも告知する。
会社がこのような通知書や通達文書を出すことで、これまで見逃してきた遅刻については今後一律厳しく取り扱うという新たな社内ルールが設けられたことになり(設けられたことにする)、過去の行為とは切り離して考えることが出来、処分の均衡を欠くという批判に反論することが出来るようになる。

【始末書の提出】

始末書を提出させた後に懲戒処分を行うとの就業規則の規定がある。

従業員が問題行動を起こし、素直に始末書を提出した場合は何ら問題はないが、従業員が始末書を提出しなかった場合はどのように対応すればよいのだろうか?なお、多くの裁判例は、憲法第19条の思想良心の自由を尊重するとの趣旨から、始末書を提出しなかったことのみを理由にして懲戒処分を行うことはできないと述べている。

就業規則に始末書を提出するよう求めている場合、まず、会社は、問題行動を起こした従業員に対し、始末書を提出するように文書で求める。提出期限も設ける。

提出期限まで始末書を提出しない場合は、会社はその問題行動について調査の結果明らかになった事実(会社が認定した事実)と、懲戒処分を行う用意があること、言い分があるのであれば特定の期限までに言い分を文書で提出するように求める。

ここで会社が認定した事実については後々問題となることが多いので、関係者からヒアリングを行ったり、客観的な事実と照らし合わせて慎重に調査する。言い分を期限までに提出しない場合は、弁解の機会を与えたにもかかわらず放棄したとみなす。言い分を期限までに提出した場合は、その言い分に対し会社は反論する。その上で、会社が認定した事実にもとづき懲戒処分を行う。
かなり回りくどいやり方であるが、社内に労働組合がある場合は後々のどのようなトラブルに発展するかは予測が出来ないため、会社としては定められた手続きを踏んで後々争われるリスクを極力減らして対応するべきである。

【団体交渉】

組合員である従業員に対し、懲戒処分を行う可能性があり言い分を提出するよう文書で求めた場合、所属労働組合が団体交渉を申し入れる場合がある。団体交渉には応じるべきか?
懲戒処分はあくまでも個人対使用者の問題であり、集団的労働条件(労働時間や賃金)ではなく団体交渉の議題にもなじまないようにも思われる。

しかし、日本では、諸外国のように苦情処理機関の設置を義務づけているわけではないので、懲戒処分などの個人的労働条件についても団体交渉が苦情処理機関と同様の機能を果たすことがあり、労働組合が求めた場合は、使用者は団体交渉を行う義務があるので、団体交渉に応じるべきである。

 

 

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