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第22回 平成21年12月14日 「人員削減①」

1)労働組合が存在する場合の人員削減の留意点

2008年のいわゆるリーマンショック以降、業績不振に陥る企業が相次いでいる。今後不況が長引けば、人員削減に手を付けざるを得ない企業も多く出てくるものと思われる。
本稿では、労働組合が存在する場合も含めて、企業が人員削減を行う際の留意点について述べる。

2)なぜ希望退職を実施する必要があるのか?

大企業の場合、人員削減は希望退職を募集する方法により行うことが多い。
一方で、中小企業の場合は、希望退職募集の手続きをとらず整理解雇に踏み切る場合が多い。中小企業の場合でも希望退職募集の手続きを踏むべきであろうか?

整理解雇は企業の業績が悪い場合に行われるものであるが、企業の業績不振について労働者に落ち度が無い場合が多い。そのため、日本の裁判所は、人員削減の必要性が認められ、企業が整理解雇以外の方策をとる努力を尽くし、労使協議を行い、それでも整理解雇以外に方策が無い場合にのみ整理解雇を認めるようになった。

裁判例の蓄積によりいわゆる整理解雇の4要素(要件)といわれるものが挙げられるようになった。すなわち、整理解雇は①人員削減の必要性②解雇回避努力の履行③被解雇者選定基準の合理性④労使協議が誠意をもって行われたかをふまえて、その有効性が判断されることになる。

上記4つの要素のうちの②解雇回避努力義務の履行において、企業が整理解雇をする前になすべき措置として希望退職募集が挙げられる。
なぜ希望退職募集が解雇回避努力義務の履行方法として挙げられるのか?

退職の方法はいくつかあるが、合意退職は従業員の退職の意思表示と企業の同意により成立する。希望退職募集は、従業員の退職の意思表示を募集する行為である(申込の誘引)。従業員は希望退職募集に応じるか否かの自由を有しているため、希望退職募集は、解雇を回避しかつ人員を削減する方法として有効である。実際、多くの裁判例は、整理解雇を行う際、希望退職募集を行わかった場合(例外はあるが)解雇回避努力義務を履行したと判断しないことが多い。

特に中小企業は、希望退職募集の手順を踏まずに整理解雇をすることがあるが、それは希望退職募集を行う資金を確保する余裕すらない、従業員が数名しかいないなどの事情がある場合に限られるべきである。

3)労働組合に(事前に)提案するべきか?

社内に労働組合があり、会社が希望退職募集を行うことを決めたのであれば、従業員に希望退職募集を行うことを通知することはもちろんのこと、労働組合に対しても文書で提案するべきである。書式の一例を挙げる。

                                        平成21年2月1日
●労働組合
執行委員長 ●殿
●分会殿
●株式会社
代表取締役 ●

                     希望退職の募集について

 当社は、荷主からの出荷量の激減により、毎月大幅な赤字が出ており、経営危機に直面しています(売り上げ対前年1月比45%減)。今後も景気の低迷が続き、荷主からの出荷量が回復する見込みはありません。そのため、新規採用の抑制、管理職などの手当て削減、車両減車及び売却、その他経費の削減、一時休業(雇用調整助成金の申請)等に努力し、雇用の維持に努めてまいりました。しかしながら成果をあげることができず、このままでは、会社存続が危ぶまれる状況です。
 
 当社では、これまで雇用の確保を最優先してまいりましたが、事ここにいたっては、やむなく下記要領により希望退職者の募集を実施することを決定いたしました。従業員各位には厳しい決断を迫ることになりますが、現在の状況下での当社の特別配慮をご勘案のうえ、ご検討いただきますようお願いいたします。 

                          記

1.募集対象者   トラック運送従業員(但し、会社が承認した従業員のみとする。)
2.募集期間   平成21年3月1日(日)~3月15日(日)
3.募集人員   11人
4.退職日   平成21年3月31日付け
5.退職条件   退職特別手当   勤続年数は平成21年3月31日現在とします。
           勤続年数      4年未満 ●万円
           勤続年数 4年以上~8年未満 ●万円
           勤続年数 8年以上      ●万円
6.応募手続   退職を希望する従業員は、所定の退職願を社長に提出してください。
7.その他     在籍する従業員の賃金は今後は削減する予定です。
 
                                                 以上

 

4)募集対象者を制限しても良いか

募集対象者を制限することは可能である。希望退職募集は、一般的に通常の退職よりも条件を上積みして従業員の自発的な退職の意思表示を誘う行為である。従業員が、いわゆる通常の自己都合で退職することを妨げるものではない。

したがって、一定年齢以上の従業員のみを希望退職募集の対象としたり、特定の一部の事業所のみで希望退職募集を行うことも可能である。

企業と労働組合は、希望退職募集の募集対象者の範囲について団体交渉で協議を行うことが多い。特に組合員が希望退職募集の対象者に多く含まれるときは、組合差別ではないのか、不当労働行為ではないかと抗議を受けることがある。

多くの場合は、希望退職募集の対象者の範囲と組合員の範囲が事実上重なるだけであるが、無用のトラブルを避けるため希望退職募集の対象者の範囲を団体交渉の過程で広げることもある。

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