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第20回 平成21年11月23日 「不利益変更②」

1)労働組合がある場合の労働条件変更の進め方

不利益変更の手順

・組合がある場合、複数の組合がある場合


 (組合がある場合)
組合員の不利益変更か否か→組合員資格のある従業員の不利益変更であれば労働協約を結ぶのが原則
労働協約を結べない、もしくは変更できない場合。
既存の労働協約がある場合は、解約(期間の定めがない場合)。解約できない場合は、期間が過ぎるのを待つ。
中町先生の図4-2

労働協約を解約できた場合は就業規則の変更により実施する。
就業規則を変更する場合は、労働組合と事前に協議する。最後まで合意が出来るよう努力する。
代償措置を設けられるか、不利益を緩和できないか最後まで協議し、変更できるところは変更する。


(複数の組合がある場合)
基本的には一つの組合しかない場合と同じ。
提案時期、交渉日については近接して行う。
交渉人数、交渉人員については組合の規模によっては差をつけては構わない。
一つの事業場の4分の3以上の同種労働者に適用される労働協約は、ほかの同種労働者にも適用され得ることになる。



・個別同意書を取る必要がある場合、その際の留意点


就業規則変更によって不利益変更は理論上行うことが出来るので必ずしも個別同意書を不利益変更を行うに当たってとる必要はありません。

ただし、組合のない会社で不利益変更に反対した従業員が組合に加入した場合や、組合員資格のない管理職の一部が不利益変更に反対して、外部の労働組合に加入した場合は、訴訟リスクが一気に高まるので、数十パーセントの賃金カットや退職金カットを行った場合は、他の適用対象となる従業員の同意の有無もある程度は重視されますので、同意をとっておいた方がよいと思います。


(個別同意書をとることによる問題点)

一度個別同意書をとると、次回からは就業規則で変更できなくなる。
労働契約法第7条「ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除きこの限りではない」
労働契約法では、個別同意は就業規則の効力に優先しますので、一度個別同意をとると労働条件を変更する際は、労働協約か個別同意書を再びとらなければならなくなる。


留意点

シンガー・ソーイング・メシーン事件(最高裁昭和48年1月19日)


退職金放棄の事例であり一概に同じとはいえないが、書面があるからといって、必ず有効とはならないので参考判例としてあげた。
退職する際に「いかなる誠実の請求権をも有しない」との文書を差し入れたことについて効力が争われた。

書面による賃金、退職金カットに対する合意書があったとしても、放棄の意思表示が労働者の自由な意思にもとづくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していなければならない
→例えば、賃金カットに合意しないと解雇するかもしれないなどという状況では駄目で、自由に選択できる状況にあればよい。

・労働協約と就業規則の関係
労働契約法第13条により労働協約が就業規則と抵触する場合は労働者に有利な場合も不利な場合も労働協約の効力が優先します。
ただし、労働協約というのは労働組合員に対してのみしか効力を有しないので、非組合員については就業規則を変更しなければなりません。


2)ケース別の対応例

・手当の切り下げ
日本ロール事件

【事案】
旅費の日帰り出張日当(2000円~4000円)、営業職の外出時食事補助(400円)、時間外食事代(500円)、夜勤手当(600円)を廃止した。JMIU日本ロール支部はそれに反対し、訴訟になった。

【裁判所の判断】
①労働条件の変更の必要性
直前の決算では、4億円の営業利益が生じていたこと、本来義務がない失効した年次有給休暇の日数に応じて手当を支給していることから高度の必要性はない。47頁

②労働者の受ける不利益
(全体について)金額が少なくとも賃金である以上、労働者の受ける不利益は軽くはなく、削減には高度の必要性が必要であるが、高度の必要性がない。
(時間外食事代について)会社は、食事時間も残業時間にいれて賃金を支払っているのであるから時間外食事代の廃止は合理性があると主張するが、時間外労働時間中に食事をとったかどうか、どの程度食事を取ったかは不明であり、食事時間を勤務時間にいれることも徹底しなかったことから、必要性、代償措置としては不十分である。

③労働組合等との交渉の状況
会社はJMIU支部とほとんど団体交渉を行っていない。
組合員資格のある従業員のうち、JMIU支部は35名、他の組合は20名、組合員資格があるが組合に加入していないものが100名。その中で明確に異を唱えたのはJMIUだけだが、制度の廃止自体に必要性がないので、重視できない。(黒板)

④代償措置
なし

→結論、削減は無効。

【実務上留意するべきこと】(現在同種事案を扱っているので実務上の留意点を詳しく説明する)
・手当廃止の必要性を数字で説明できるようにする(いつの時点のどの数値で説明するか)→必要性が説明できないと簡単に負ける可能性有り
・これまでの実態と手当の金額が乖離しているかデータを示す(不利益が低い、変更の必要性がある)
・一度に削減しない。段階的に削減する(どのくらいの段階をふむべきか?)。
・削減する以上、残業申請の扱いをきちんとルール化し、徹底する。
・対象となる非組合員にも説明し、同意書をもらう
・団体交渉は会社の提案(1回目)→組合の見解、双方協議(2回目)→会社の再提案(3回目)→組合の見解、双方協議(4回目)くらいのプロセスは必要になると思う。

手当てといえども裁判所は賃金の削減と同様に厳しい判断を示す可能性が高い


 

3)基本給の10%引き下げ

労働組合がある場合は、労働協約をむすんで変更することが出来ます。
個別同意を得て変更することも可能です。


労働協約を結べない場合は、就業規則を変更して実施することになります。
裁判所は、月例給、退職金については厳しい判断を示すことが多い。


住友重機械事件
事業再構築→造船事業などの重厚長大型産業については、希望退職を募集して人数を減らした上で、分社化して休職出向(賃金を下げる)
労務費削減策→賃金を2年間にわたり10パーセントを削減した。
社内には5つの労働組合。99パーセントの加入率がある組合は全て賛成。
それ以外の組合は、4つのうち3労組が02年度の賃金カットについては賛成。03年度の賃金カットについては4労組が全て反対。
4労組のうちの一つの組合が就業規則の変更は無効であるとして組合員が訴訟提起。

争点は、
① 就業規則変更の必要性はあったか→黒字ではあった。ただし当時は金融機関が貸し渋りなどを行い、政府も不良債権の査定を厳しくするなどしていて、資金繰りが厳しくなるおそれがあった。そのため、金融機関の信頼をつなぎとめ融資を受けるためには、黒字だけでは足りず、目標となる収益数値を達成する必要があった。
赤字→倒産の危機とはいえなかったので理解してもらうのが大変だった。

② 不利益性が高いか→10パーセントが高いか低いか。会社は2年限定を強調。実際には合理化で多数の社員が希望退職でやめていった。転籍で給料を2~3割カットされた。原告はその中でたまたま事業部の成績がそれほど悪くなかったため、10%の削減ですんだ。

③ 労働組合の合意があるか→少数労組は不誠実団交を強調。会社は不当労働行為をしていないこと、圧倒的多数をしめる労働組合と合意をしていることを強調。

④代償措置→会社は労働時間を短縮するなどの代償措置をとっていない 会社は余裕がないから賃金カットをしている。

 

立証活動でのポイント

客観的な数値を重視する(数値がないと勝負にならない)
雑誌などがポイントになった。

逆に資金調達が難しかったことの証明は困難をきわめた(取引金融機関との関係から詳しい話が出来ない)48頁で証言は採用されていない。
多数組合の合意形成を詳細に述べた。

・裁判所の判断
確かに賃金10パーセントカットは不利益としては小さくない。
大多数労組が同意したことは尊重するべき→50頁、第四銀行事件に続く先例

第四銀行、みちのく銀行との対比。
みちのく銀行は不利益が大きすぎた。


第四銀行、住重は不利益は大きいけれども、その他の労働組合の構成員は不利益変更の対象者とかぶるために、合意を尊重した。

 

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