労務ネット labor-management.net│団体交渉、労働組合対策、使用者側の労務問題を弁護士が解決!団体交渉、労働組合対策なら杜若経営法律事務所へ

  • HOME
  • 団体交渉|社内
  • 団体交渉|ユニオン
  • 解決事例
  • お客様の声
  • 労働組合問題
  • セミナー・講演
  • 執筆・出版
  • 事務所紹介
  • HOME
  • 会社の解散・営業譲渡①

第17回 平成21年11月2日 「会社の解散・営業譲渡①」

1)会社の解散・営業譲渡と労働組合

会社を解散・営業譲渡をしようとする場合に、労働組合員が社内にいる場合は、多くの場合その対応に苦慮します。

 

また、使用者が労働組合活動を阻害するために、新会社を設立し新会社に非組合員を移籍させた例もあり、現在も争いが絶えません。


本項では、会社の解散・営業譲渡と不当労働行為の関係について述べたいと思います。設例をもとに解説します。

物流運送は、経営不振に陥り多額の負債を抱えており事業継続が不可能となり、事業を廃止し解散することとしました。しかし、物流運送の一部門である大型トレーラー部門は何とか利益をあげており、独立採算して事業を継続できそうです。そこで、物流運送は、別会社に大型トレーラー部門の営業を譲渡することとしました。別会社である譲受会社は賃金等を切り下げた労働条件であれば当社の従業員の一部を採用することを了解したため、物流運送は、希望者を譲受会社に就職斡旋することとしました。

ところが、物流運送には労働組合があり、一部の労働組合員は物流運送の従業員で譲受会社に就職を希望したが、賃金等を切り下げた労働条件では合意できないとした従業員がおり、当該従業員は譲受会社に就職することができませんでした。やむなく物流運送は、事業廃止に伴い全従業員を解雇しました。当該従業員は、物流運送に対しては解雇無効の訴え、譲受会社に対しては、雇用契約は承継されているとして訴えを起こしました。この訴えは認められるのでしょうか?

①会社の解散について

会社は、株主総会決議により解散することができます(会社法第471条3号)。その後清算人が清算手続を行い、清算手続が終了すると法人格も消滅し雇用契約も終了します。もっとも、清算手続終了前に会社は従業員を解雇することが一般です。


業績不振による整理解雇が有効であるためには、これまでの判例の積み重ねから整理解雇の4要素を考慮されることが必要です(ここでは整理解雇の4要素についての説明は省きます)。では、会社解散の場合も整理解雇の4要素を考慮し、裁判所は解雇の有効性を判断するのでしょうか?

使用者は、憲法上営業の自由を有しており、会社を解散し営業を終了させる自由も有していると解釈されています。会社を解散するのに解雇が無効では会社を事実上解散することができなくなるからです。これらを勘案し、裁判所は、会社が解散する場合の解雇についてはほとんど有効と解しております。たとえ、会社解散が労働組合解散の目的のためのものであっても、裁判所は会社解散が偽装解散(新会社を設立し、新会社で実質的には同一営業を引き継ぐこと)でなければ、解雇を有効と解しております(東北造船事件・仙台地裁決定昭和63年7月1日、労働判例526号38頁)。この点が整理解雇と大きな違いです。

②営業譲渡(事業譲渡)

(1)ここにいう営業譲渡(事業譲渡ともいいます)とは、単に財産を譲渡するだけではなく得意先関係等の経済的価値のあるものを譲渡することをさします。具体的にいうと、タクシー事業を運営していた会社が、タクシー車両、会社所有不動産、売掛金などと共に他の会社に譲渡することをさします。


(2)会社の解散・営業譲渡において、特に問題になるのが従業員の雇用です。営業譲渡を行えば、当然に営業譲受会社が譲渡会社の従業員の雇用を引きつがなければならないのか、引きつがなくとも良いのはどのような場合なのかが問題となります。


営業譲渡により雇用契約が当然に承継されるのか否かについて述べます。
営業譲渡により雇用契約が当然に承継されるのであれば、設問の事例では従業員は譲受会社で従業員として働くことができます。

そもそも営業譲渡における「営業」に雇用契約は含まれるのでしょうか?当然のことながら、当事者が雇用契約、雇用契約から生じる債権債務を承継すると双方が合意するのであれば、雇用契約から生じる債権債務を承継します。

では、当事者が特段合意していないにもかかわらず、雇用契約から生じる債権債務は譲受人に承継されるのでしょうか?
最近の裁判例は、営業譲渡において雇用契約から生じる債権債務を当然に承継することはないとの立場に立っています。
中労委(青山会)事件(東京高裁判決平成14年2月27日、労判824号17頁)も「営業譲渡の場合、譲渡人と被用者との間の雇用関係を譲受人が承継するかどうかは、原則として、当事者の合意により自由に定め得るものと解される」と判示しています。

雇用契約を承継しない場合は、契約書において、雇用契約から生じる債権債務を承継しないとの特約を設けておく必要があります。


(3)営業譲渡契約において、雇用契約を承継するか否か、雇用契約の承継について何ら記載がなかった場合はどうでしょうか?

特に明確な合意がない場合は、譲受会社はどのくらいの割合で譲渡会社の従業員を採用したか、譲受会社の採用の基準は何かなど具体的事実をもとに裁判所が合意の内容を認定することになりますので、譲受会社の採用の基準が不明確である場合には、全員の従業員を承継する旨の合意がなされたと認定される可能性もあります。


タジマヤ事件(大阪地裁判決平成11年12月8日、労判777号25頁)は、明確な営業譲渡契約を結んだ事例ではないものの、雇用契約を承継する合意が明確になされていない事案において「譲渡の対象となる営業にはこれら従業員との雇用契約をも含むものとして営業譲渡がなされたことを推認することが出来る」と判断しました。


(4)特定の労働組合員のみの雇用関係のみを引き継がず、他の非組合員の雇用関係を引き継ぐと、営業の譲受会社と合意し、特定の労働組合員のみ雇用を引き継がなかった場合はどうでしょうか?
労働組合法は、使用者は、労働組合員であることや正当な労働組合活動を行ったことを理由として不利益に取り扱ってはならないと定めていますので、特定の労働組合員のみの雇用を引き継がなかったことは許されるのでしょうか?

裁判所は、特定の労働組合員のみをあえて採用しなかったのであれば、このような合意は譲渡会社と譲受会社とか組合及びこれに属する職員を嫌悪した結果これを排除することを目的とするものであり、本件不採用は労働組合法に違反し、かつその点を除けば実質は全ての従業員の雇用関係を承継したに等しいので特定の労働組合員は譲受会社において従業員としての地位を有すると判断しています(東京高裁判決平成14年2月27日、労判824号17頁)。

要するに、特定の労働組合員のみを排除する場合は、実質は全ての従業員の雇用関係を引き継いだものと等しいので、特定の労働組合員も譲受会社において従業員の地位を有することになります。

執筆・出版・連載記事に関する一覧

直近の執筆一覧(2012年~)

過去の執筆一覧(~2013年)

当事務所の弁護士による出版物

「労働新聞」連載記事(2009年7月~12月)

「物流WEEKLY」連載記事(2007年4月~2009年7月)


Copyright (C) 杜若経営法律事務所 All Rights Reserved.