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第11回 平成21年9月21日 「便宜供与①」

1)労働組合法第7条3号は、使用者が労働組合に対し経費援助や便宜供与を行うことを禁止している。


労働組合は使用者の援助なしに運営するのが原則であり、使用者が労働組合に便宜供与を行うことは労働組合の自主性を損なうおそれが強いからである。


しかし、現実は使用者が労働組合に便宜供与を行って問題になったことは少なく、逆に労働組合が使用者に対し便宜供与を要求することが多くある。また、一部の労働組合は、使用者が労働組合の便宜供与の要求に応じない場合は支配介入に当たると主張することがある。

一方で労働組合法第7条3号は、労働時間中の団体交渉・労使協議の有給保障、福利厚生基金への補助、最小限の広さの事務所の供与を経費援助にあたらないと定めている。それ以外にも組合掲示板の貸与や組合費のチェックオフ制度などが便宜供与として行われている。

では、使用者は、労働組合が求める便宜供与に応じなければならないのだろうか?

使用者が労働組合の要求する便宜供与に応じるか否かは使用者の裁量に委ねられるべきであり、特段の事情がない限り使用者が労働組合の要求する便宜供与を断ってもかまわない。ただし、企業内に複数の労働組合があり、使用者が一方の労働組合にのみ便宜供与を行い、他方の労働組合に便宜供与を行うことを拒否した場合は支配介入行為に当たる可能性がある。

また、実務上単に便宜供与を理由もなく断るだけでは、労働組合も納得しないだろうから、具体的な理由を述べて断る必要がある。
便宜供与は通常会社と労働組合が労働協約を交わし、労働協約にもとづいて行うものなので、書式を示しながら以下、便宜供与の類型別に説明する。

①組合掲示板について

使用者が労働組合に対し組合掲示板を貸与する場合の文例は以下のとおりとなる。使用者が労働組合に対し掲示板を貸与することで、ほとんどの場合、労働組合は構内でビラを配らなくなる。また、掲示板を貸与しているにもかかわらず、あえて無許可で禁止されているビラ配り行為を行った場合は、これらの行為に対し、会社が懲戒処分をすることができる有力な理由の一つとなる。

また、使用者と労働組合が、下記の文例のとおり(第7条)、労働協約において掲示板の撤去要件を合意して定める場合がある。この場合、労働組合が形式的に撤去要件に該当する行為を行った場合に(会社を誹謗中傷した場合など)、使用者が労働協約にもとづいて撤去できるかどうかが問題となる。

裁判例の中には、形式的に撤去要件に該当する行為を行った場合でも、掲示内容、掲示場所、会社運営に与える影響などを考慮して労働組合活動として許容される範囲を逸脱していないのであれば、違法となるとの判断を示したものもある(東京高判平成19年8月28日労判949号35頁)。

 

したがって、労働組合が会社を誹謗中傷したとしても、すぐさま撤去要件に該当するとして掲示板を撤去する行為は違法であると判断されるおそれがある。まずは、労働組合と協議し、労働組合の撤去要件に該当する行為について抗議し、それでも改めない場合は、労働組合により自発的に掲示板の掲示内容を変更するか、掲示板を撤去するよう求めるにとどめておいた方がよいと思われる。



組合掲示板の貸与および利用に関する協定

株式会社●(以下、「会社」という)と、●労働組合(以下、「組合」という)とは、労働組合法の趣旨に従って円満な労使関係を維持する目的で、会社は組合に対し、次のとおり、組合掲示板を貸与する。

第1条 会社は組合の要求により、組合員が在籍していることを確認できた事業所に90㎝×60㎝を限度とした組合掲示板を1ヶ所設置して、これを組合に貸与する。
※サイズを具体的に指定するべきである

第2条 組合は、組合掲示板以外には、一切掲示、貼付をしてはならない。
また、会社施設内で文書を配布してはならない。


第4条 組合掲示板の設置場所は業務上支障が無く、かつ、部外者の目にふれないところとする。
※具体的に設置場所を特定できるのであれば特定するべきである。

第5条 会社は業務の都合により、組合掲示板の設置場所を変更することができる。

第6条 組合が会社に対し、事業所に組合掲示板の貸与を求めるときは、掲示板の貸与を求めようとする事業所に組合員が在籍することを立証するものとする。組合は組合員が在籍しなくなった事業所が発生したときは、その都度遅滞なく会社に申し出るものとする。なお、会社は組合員が在籍しなくなった事業所で貸与した組合掲示板を撤去することができる。
※時間がたつにつれ、組合員が当該事業所に在籍しないことも想定される。組合員が在籍しない場合は、組合掲示板を貸与する必要性もなくなるので、上記のとおり、組合員の在籍を要件として貸与することも可能である。

第6条 次の各号に該当する文書等を掲示または持ち込んではならない。
(1)会社の信用を失わせるもの、またはその恐れがあるもの。
(2)会社や個人を中傷、誹謗したり、侮辱したり、会社や個人の権利を侵害したり、またはその恐れがあるもの。
(3)事実を歪曲したり、他の人をしてこれを煽ったり、事実と違う印象を与えたり、またはその恐れがあるもの。
(4)職場の秩序を乱し、またはその恐れのあるもの。
(5)徒に労使関係を悪化させる表現、またはその恐れがあるもの。
(6)政治、または宗教問題に関するもの。
(7)その他上記の各号に準ずるもの。
※実際に上記条項に当たるかどうかは条項自体が抽象的で判断が難しく、組合の行為が上記条項に該当するかどうかは慎重に判断する必要がある。

第7条 組合は、文書を掲示する行為を労働時間外に行うものとする。
※労働組合活動はあくまでも就業時間外に行うべきである。

第8条 組合が本協定に違反したときは、会社は組合に対して掲示物の撤去を求めることができ、組合がこれに応じない場合、会社は掲示板の利用を禁止し、かつ、掲示板を撤去することができる。
※上記記載のとおり、裁判例の中には、形式的に撤去要件に該当する行為を行った場合でも、掲示内容、掲示場所、会社運営に与える影響などを考慮して労働組合活動として許容される範囲を逸脱していないのであれば、違法となるとの判断を示したものもあるので、掲示板の撤去については慎重に判断する必要がある。

第9条 本協定の有効期間は、双方調印の日から1年間とし、期間満了の1ヶ月前までに、会社、組合双方、またはいずれか一方から書面による変更協議、または廃棄の申し出がない場合は、更に1年間延長するものとし、以後も同様とする。
※労働協約には期間を設けるべきである。期間を設けない場合には、労働組合と合意した上で解約するか、労働組合法第15条3項にもとづき解約するしかない。
2 前項の書面による変更協議の申し出があった場合は、会社および組合はこれに応じ、誠意をもって協議しなければならない。
3 前項の場合は、第1項の期間満了後2ヶ月間は本協定の効力が継続するものとする。
※協議が不調に終わり労働協約の期間が経過しても、すぐに労働協約をしっこうさせるのではなく、労働協約の期間経過後も労働協約の効力を継続させ、その間協議の余地を残しておいた方が実務上得策であることが多くある。

                                                 以上

平成  年  月  日

株式会社●
代表取締役●

●労働組合
執行委員長●


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