労務ネット labor-management.net│団体交渉、労働組合対策、使用者側の労務問題を弁護士が解決!団体交渉、労働組合対策なら杜若経営法律事務所へ

  • HOME
  • 団体交渉|社内
  • 団体交渉|ユニオン
  • 解決事例
  • お客様の声
  • 労働組合問題
  • セミナー・講演
  • 執筆・出版
  • 事務所紹介
  • HOME
  • 非正規雇用従業員の組合加入②

第9回 平成21年9月7日 「非正規雇用従業員の組合加入②」

1)派遣社員について

・ 派遣契約の期間途中で派遣契約を解約したところ派遣労働者が労働組合に駆け込んだが、派遣先にも団体交渉を求めてきた。団体交渉に応じなければならないのか?


派遣元は、派遣労働者を直接雇用しているため、労働組合法第7条第2号(団体交渉拒否の条文)の団体交渉に応じなければならない「使用者」にあたる。


では派遣先は、労働組合法第7条第2号の「使用者」にあたるのだろうか?
この点について参考になる判例がある。

朝日放送事件判決(最高裁平成7年2月28日判決、労働判例668号11頁)である。
放送会社からアシスタントディレクター、音響、照明など、放送関連の技術業務を請け負っている三社の従業員が、発注者である放送会社に団交を申し入れたところ、雇用主でないことを理由に団体交渉を拒否した事件である。

朝日放送事件判決は、「一般に使用者とは労働契約上の雇用主をいうものであるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的且つ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の『使用者』に当たるものと解するのが相当である」と判示している。

この事例はいわゆる請負契約における事例であるが、発注会社が派遣労働者の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境を支配・決定していた事案であるので、これを派遣契約に類推して考えてみると、派遣先企業が派遣労働者の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境を支配・決定していた場合は、その限りにおいて、派遣先企業は労働組合法第7条第2号の「使用者」にあたる。

通常の派遣契約において、派遣先企業が派遣労働者の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境を支配・決定することが多いので、その限りにおいて団体交渉には応じた方がよいということになる。

ただし、ほとんどの事例では派遣労働者の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境などが団体交渉の議題ではなく、派遣契約の中途解約に伴う派遣社員の地位にかかわるものである。このような場合も団体交渉には応じた方がよいのだろうか?

この点、派遣先企業が派遣契約を中途解約しなければ、派遣労働者の雇用契約も終了しなかったのであるから、派遣先企業も雇用主である派遣元企業と同様に基本的な労働条件を決定できる地位にあり、派遣社員の雇用契約上の地位に関する団体交渉には派遣先企業も応じなければならないという見解もあるかもしれない。

しかし、あくまでも、派遣労働者と派遣元企業との雇用契約、派遣先企業と派遣元企業との派遣契約は別個のものである。派遣先企業と派遣元企業が派遣契約を解約して、結果として、派遣社員の雇用契約上の地位が影響を受けたとしても、派遣元企業が派遣社員に別の派遣先企業で働けるようにしたりすることもある。

 

派遣先企業と派遣元企業との派遣契約の中途解約=派遣労働者と派遣元企業との雇用契約の解消ではない。したがって、派遣先企業は、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的且つ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえないと考える。

ただし、理論上は上記のとおりであっても、労働組合の団体交渉申し入れを頑なに全く拒絶することでかえって紛争解決が難しくなる場合もあるかと思う。そのような場合は、団体交渉という名称はとらなくとも、派遣先企業が労働組合と話し合いの機会を持つように努力した方がよいこともあるので注意が必要である。

 


・ 派遣契約の期間途中で派遣契約を解約したところ労働組合に駆け込まれた場合、派遣元企業、派遣先企業はどのように対応すれば良いか?


まず派遣契約の派遣契約期間中の解約について述べたい。労働者派遣契約について派遣法は特に定めを設けていない。

派遣先企業と派遣元企業のいずれかが派遣契約の債務不履行を行った場合解約できるほか(債務不履行解約、民法第415条)、その他の解約については、派遣先企業と派遣元企業が派遣契約において、どのような場合に解約することができるか定めることになる(合意解約)。

一般的に、現在行われている派遣契約の解約事例の中には、上記の債務不履行解約か合意解約のいずれにもあたらず、単に派遣先企業が業績不振であるという理由で解約していることが多いようである。

 

このような解約は法的には無効であり、理論上は、派遣元企業は、派遣先企業に対し損害賠償請求を行うことが可能である。損害賠償請求の内容であるが、派遣元企業は少なくとも派遣契約期間中は派遣労働者を雇用しなければならないので、その賃金を請求することが出来るし、派遣元企業は派遣契約が存続することができていたら得られるであろう利益を請求することも出来る。

この点、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」は、「解除を行おうとする日の少なくとも30日前に派遣元事業主に対しその旨の予告を行わなければならない。予告を行わない派遣先は、速やかに、当該派遣労働者の少なくとも30日分以上の賃金に相当する額について損害の賠償を行わなければならないこと」と定めていることから、派遣先企業の中には、「30日分以上の賃金」を支払えば解約できると勘違いされているところもあるが、「少なくとも」「30日分以上の賃金」を支払わなければならないと定めているだけに過ぎず、「30日分以上の賃金」を支払えば派遣契約期間途中の解約が有効になるとか派遣先企業としての義務を果たしたと考えるのは誤りである。


・派遣契約の期間途中で派遣契約を解約したところ労働組合に駆け込まれた場合、派遣元企業、派遣先企業はどのように対応すれば良いだろうか?


団体交渉に向けて、派遣先企業と派遣元企業で損害賠償の金額について内部で損害賠償の金額について争っても仕方がない。

 

派遣契約を法律上、契約上の根拠無く派遣契約期間途中の解約をした場合は、派遣元企業も派遣社員を解雇していることが多いので、まず期間の定めのある雇用契約の契約期間途中での解雇と同様に、派遣元企業は派遣社員に対する解雇を撤回し、派遣契約期間満了までの賃金を労働組合および派遣労働者に提示するべきである。

 


・派遣契約期間満了までの賃金に加えて、その他に解決金を支払うべきだろうか?


派遣社員の場合は、期間の定めのある雇用契約を結んだ従業員よりも雇用継続の期待は薄いので、必ずしも月給の数ヶ月分を加えて提示する必要はないようにも思える。

 

しかし、派遣社員にとっては、目前に生活の不安が迫っているため、そのような理屈を言っても団体交渉ではほとんど意味がない。したがって、期間の定めのある雇用契約を結んだ従業員の場合と同様に、いくばくかの解決金を早めに提示するべきであると思うし、その方が紛争を早期に解決することができると思う。

 

紛争が解決した後に、派遣元企業は派遣先企業に対し、派遣元企業が負担した解決金などを請求することになる。

執筆・出版・連載記事に関する一覧

直近の執筆一覧(2012年~)

過去の執筆一覧(~2013年)

当事務所の弁護士による出版物

「労働新聞」連載記事(2009年7月~12月)

「物流WEEKLY」連載記事(2007年4月~2009年7月)


Copyright (C) 杜若経営法律事務所 All Rights Reserved.