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  • 非正規雇用従業員の組合加入①

第8回 平成21年8月24日 「非正規雇用従業員の組合加入①」

1)非正規雇用従業員が労働組合に加入するケースが増えていることについて

各種報道によると、日本の労働組合員数は横ばいか減少傾向にあるが、いわゆる非正規雇用従業員については、各県程度の差こそあれ増加傾向にあるようだ。


特に、昨年後半から不況の影響で製造業を中心に「派遣切り」などと呼ばれる非正規雇用従業員の労使トラブルがテレビや新聞で放送されるようになった。

今後の政府の非正規雇用従業員に対する法規制によるところが多いが、おそらく今後も企業は、グローバル競争を勝ち抜くために、非正規雇用従業員を活用せざるを得ないと思われる。それと共に、現在起きている非正規雇用従業員に関する労使トラブルも一過性のものではなく、今後とも継続して起きると思う。
今回は、非正規雇用従業員が労働組合に加入した場合を想定し、各種場合分けをしてその対応方法を述べることとする。

2)各種契約類型ごとの対応策

①期間の定めのある雇用契約を結んだ従業員について

・ 期間途中で解雇したところ労働組合に駆け込まれた

最近、使用者が期間の定めのある雇用契約の契約期間途中であるにもかかわらず、従業員を解雇しようとしたところ(解雇予告をしたところ)、従業員がそれに反発し、労働組合を結成したことなどが報道された。
期間雇用契約を期間途中に解消する場合、その解消理由については、民法第628条の適用を受け、「やむを得ない理由」が必要とされる。

また、労働契約法17条においても、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事情がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と規定している。


「やむを得ない理由」や「やむを得ない事情」とは期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由を指すと言われている。したがって、期間の定めのある雇用契約を結んだ従業員を期間途中で解雇することは非常に困難である。

では、期間途中で解雇しようとしたところ、労働組合に加入した場合はどのように対応すれば良いのだろうか?

上記のとおり、期間の定めのある雇用契約の場合、期間途中で解雇することは非常に難しく、裁判所で争ってみても解雇が有効となる可能性はほとんどない。それどころか、時間が経てば立つほど、解雇が無効と判断された場合の未払い賃金は膨らみ、資金的に余裕のない会社はそれだけで倒産してしまう。

したがって、期間途中に従業員を解雇してしまった場合は、会社は団体交渉の初期段階において、解雇を撤回するべきである。その上で、会社は、組合と合意の上で従業員が退職できるように提案するべきである。なお、団体交渉の場で、解雇撤回について謝罪を迫られることもあるが、謝罪という言葉を使用しなくとも、「手続に不備がありご迷惑をかけた」など率直に事実を述べれば足りる。

具体的には、雇用契約期間満了時までどのくらいの日数が残されているかを確認し、その期間の賃金を計算する。それに加えて、会社は合意退職のための解決金としての金額をいくばくか用意するべきである。この点、雇用契約期間終了時までの賃金を補償すれば足りるのであって、それ以上の解決金などを用意する必要は無いと考える方もいると思う。しかし、後述するが、雇用契約期間が終了したとしても、いわゆる解雇権濫用法理が類推適用される場合は多く、その場合はいわゆる雇い止めには合理的な理由が必要であるとされている。

したがって、雇用契約期間終了時での賃金を補償したとしても、それで解決するわけではなく、従業員が裁判所に雇い止めは無効であると訴えることが可能なのである。以上のリスクを勘案すると、雇用契約期間終了時までの賃金を支払うだけではなく、従業員に合意退職のための解決金を提示するべきである。提示金額は一概にどのくらいが適当であるとはいえないが、組合に駆け込まれた場合は、解決金としては、再就職できるための資金として提示し、雇用契約期間終了時までの賃金に加えて、最低1ヵ月の賃金の2ヵ月分程度は必要なのではないかと思う。もちろん、期間の定めのある雇用契約とはいっても、漫然と自動更新を行っていたりすれば、先ほども述べたとおり解雇権濫用法理が類推適用される可能性が高いため、組合が雇用契約期間終了時までの賃金に加えて、最低月給の2ヵ月以上の金額を求めることもあり、解決のための金額がさらに多額になることも考えられる。


・ 雇い止めしたところ駆け込まれた
雇い止めをしたところ、労働組合に加入した場合はどのように解決をしたらよいだろうか?
このような場合、労働組合や労働組合に加入した従業員も実は一刻も早く解決したいと思っていることが多いようである(もちろん例外もある)。

労働組合に加入した従業員は、すでに一度は職場を離れている。そのため、以前自分が担当した仕事は無いか、他の誰かが担当している可能性がある。また、一度雇い止めを受けた以上、感情的にも雇い止めをした会社に戻りたいとは思わないことが多いようである。したがって、労働組合に加入した従業員は、表面上は雇い止めの撤回を求めてはいるものの金銭解決を望んでいることが多いのである。

だからといって、会社が第1回目の団体交渉で、いきなり「金銭解決をしたい」と団体交渉で述べることはいたずらに労働組合に加入した従業員の感情を逆撫ですることがありリスクがある。そのため、第1回目の団体交渉では、労働組合が雇い止めの撤回を求め、会社が雇い止めの有効性を主張し、議論が平行線をたどることになることが多くなる。

 

しかし、2回、3回と団体交渉を重ねていくうちに、折を見て、労働組合側から「別の解決策はないか」などと金銭解決をほのめかすような発言をすることがある。このような発言を受けて、会社は退職を前提とした金銭解決の話し合いをすることを提案することになる。

ただし、本人があくまでも職場復帰にこだわっている場合がある。このような場合は、労働組合も本人の意思を尊重してなかなか金銭解決の話しをしようとはせず、団体交渉も膠着状態に陥る。労働組合も本人の前ではなかなか労働組合独自の考えを話すことは出来ない。このような場合はどうしたらいいのだろうか?

団体交渉終了後、次回の団体交渉の開催日時場所を決めるため、会社と労働組合が電話などで日程調整をすることがあるが、この機会に、労働組合の意向を聞いてみる(「金銭解決はできないのか」、「会社は早期解決を図りたいが、組合は本当のところはどう考えているのか」など)。
労働組合の意向だけを聞いてみることは違法ではないが、逆に団体交渉が継続しているにもかかわらず、会社が労働組合を飛び越えて、本人に退職の意向を聞くことは支配介入・不誠実団体交渉と言われるおそれがあるので注意をしていただきたい。

労働組合が、組合員と同様にあくまでも職場復帰にこだわる場合は、裁判所か労働委員会に行くことになるが、往々にして、このような場合、労働組合から意外な本音を聞くことが出来る。労働組合も、色々な事例を間近に見て、職場復帰にこだわることが組合個人のためになるか否か思うところがあるはずである。

 

労働組合が金銭解決を考えていることをほのめかすのであれば、粘り強く団体交渉を行うべきで、このような場合はその後団体交渉を行い、解決に至ることが多いようである。

では、金銭解決を図る場合、どの程度の金銭が必要になるのだろうか?
これは(当たり前であるが)一概にいえない。裁判所の場合は、期間の定めのある雇用契約の更新状況、継続雇用を期待させる事実があったかなどを重視して、会社に不利な事実があればあるほど、裁判官の心証に応じて和解金額を上積みする傾向がある。

一方、労働組合の場合は、裁判所とは異なり、組合員である従業員の生活が苦しく、具体的に言うと生活費が足りず金銭を必要としている場合には、それほど多額の金銭を求めない代わりに早急に金銭を支払うよう要求することがある。また、労働組合は、会社の規模、支払能力を重視して、要求する金銭の金額を決定しているようにも思えることがあり、数回の団体交渉を経て現実的な解決金額を提示することもある。


先ほども述べたとおり、雇用契約期間が終了したとしても、いわゆる解雇権濫用法理が類推適用される場合は多く、その場合はいわゆる雇い止めには合理的な理由が必要であるとされている。

そのため、会社としては、社会保険労務士や弁護士に相談して、裁判所などに持ち込まれた場合にどの程度勝算があるのか確認し(事前に予測は難しいが)、雇い止めの効力を争うことで得られるメリット(安易に金銭解決せず他の同種事例が起きることを防ぐ)、デメリット(時間、訴訟費用)などを考慮して、解決金の金額を提示することになる。

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